第4回】一番厳しい質問をする人を説得できなければいけない

世界的な経営コンサルタントであり、オピニオンリーダーである大前研一さんと、『ゼロ――なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)を刊行したばかりの堀江貴文さんがくり広げる刺激的な対談が始まりました。元原子炉設計者と、現ロケット開発事業者であるエンジニア二人だからこそ語りつくせるテクノロジーの可能性。日本の未来を切り拓くにはどうしたらいいのか。徹底的に語っていただきました。今回は、原発問題におけるリーダーシップの欠如のお話から、なんと大前さんの都知事選敗北の理由まで。最終回の第6回まで一気に、毎日連続更新です!

政治の一番の問題は、リーダーシップの欠如

堀江貴文(以下、堀江) 大前さんは3・11の後に、1人で原発事故の原因究明をする「一人事故調」をやっていらしたわけですけど、再稼働についてはどう思われますか。

大前研一(以下、大前) 私はあの事故が起こった時、技術屋として「なぜあんなことが起こったのか」がすごく知りたかったんですね。それで、私は自分を納得させたいと思って、全部自分でカネを出して一人で事故の調査をしたわけですよ。その結果、「これだったら安全だろう」というところまでたどり着いた。もし原発を再開するとしたら、私の本やレポートにも書いてある指摘点をいろいろ修正してもらおうと。それで、オペレーターの訓練から地元の自治体の人たちの演習まで、いろいろ繰り返しやってもらう。こういうことがしっかり整えば、私は再開しても問題ないだろうと思っているんですけどね。

堀江 それはいいですね。

大前 ただし、私が結論を出したようなことを全部やってくれない人たちなのであれば、その連中に任せるのは絶対に嫌なんです。それでもやろうとするならば、「お前ら、福島をちゃんと理解しているのか」と疑問に思ってしまいます。ここがやっぱり、非常に重要なところだと思うんですよ。

堀江 今回の福島に関していえば、人的被害が大きいイメージがあって、テクノロジー面での津波対策ってあまり進んでいないような気がするんですけど、どうですか。

大前 今日に至るまで瓦礫の掃除と除染だけして、業者が儲けているだけ。結局、その後何もできていないです。阪神淡路大震災のときには、1年後にはほぼ復旧に近い形にできていたのに、福島の遅れっていうのは信じられないほどの遅れです。日本という国の組織能力は極端に落ちましたね。
 2011年3月19日のYouTubeの放送でも言っているんですけど、僕は津波被害にあった付近には人が住むべきじゃないと思っています。なぜなら古くから、何回もあそこは津波でやられていると。それで実際に東北にいってみると、「津波がここまできました」ということを示す石碑がたくさんあるんですよ。そこまで本当に波がきているわけです。
 ということは、普通の国であれば、そこは津波被害地域に指定して、住むのに不適合なのだから、そこに住んでいた人たちは丘の高いところに引っ越すようなことをしないといけないと思う。これは、すでに津波発生時の1週間後に話をしていることですし、政府にも言いました。

堀江 でも、結局対策はとられてないわけですよね。

大前 その通りです。たとえばアメリカとかオーストラリアでは、「この地域は100年に1回洪水になるので、住居には不適」というFLOOD PLAINと指定された場所が決まっているんです。それでもそこに住居を建てたい人は、2mの盛り土を作るかしなさいと。そこに好きで建てているんだから、流されても政府(納税者)は知らないよ、ということですね。

堀江 自己責任なんですね。

大前 だから、あそこに家を再建したいという人がいたら、自分のリスクでやるしかないでしょうね。流されるとわかっている場所なんだから、TSUNAMI PLAINと指定されたところに住んでいた人の被害は納税者に負担させるべきじゃないと思います。

堀江 それにしても、全然そういうことが行われていないというのは日本的な問題ですよね。

大前 リーダーシップの欠如ですよね。

堀江 でも意外と技術的な部分をちゃんと理解した上で、リーダーシップをとれる人材がいないんですよね。政治的にそういう人って出てこないですよね。

大前 オーストラリアの元首相で、ジュリア・ギラードっていう人がいます。2011年1月、クインズランド州で大洪水があったときに、洪水の中から全国に生放送して、「ここの復興のために、向こう何年間か税金を何%かあげさせてください」とその場で言ったんです。日本もああいうのをやるべきなんですよ。大事故のなかに立って、「ここはもう人が住んではいけない」と演説する。例外的に、漁業の人なんかはあそこで作業しなきゃいけないから、その場合は緊急避難の場所を作ります、と。以上終わり!
 しかも、やるなら初日にやらなきゃダメですよ。やっぱりみんなに問題が見えているときにやらないと。2年半、3年近くたった今になると、「やっぱり私は帰りたい」という人も出てきてしまうだろうし。

堀江 これもリーダーシップの問題ですよね。

大前 ただ、原発をやめてしまうとエネルギーコストが非常に高くなったときにどうするのかという問題がありますよね。たとえばOPECへの抑止力とか。日本の原子力は最高の抑止力だったんです。エネルギーが30%以上自前で供給できるっていうのは、抑止力になるんです。でもこれがなくなってしまうと、相手のいいなりになるしかありませからね。

堀江 相手から、足元を見られてしまうっていう話ですよね。

大前 その通り。実際、現に日本はLNG(液化天然ガス)を世界で一番高い値段で買ってるし、石炭も80ドルぐらいで買っている。つまり、足元をみられているんですよ。向こうは、日本が焦っているのもわかっているしね。だからこそ、日本は国として、原発の能力を温存しておく。実際何%原発から供給されるエネルギーを使うかは別として、原子力を温存しておくっていうのが化石燃料資源を持たない日本の国民にとっても非常にプラスなる。日本はこれをちゃんとメッセージとして出すべきだと思うんですよね。

堀江 そういうのは、やっぱりリーダーシップがないからできないっていう話になるんでしょうね。

一番厳しい質問をする人を説得できなければ、物事は進んでいかない

大前 それもあるし、あとはリーダーが正しく状況を理解するために、時間を割いていないんですよね。

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本気のテクノロジーが世界を変える—大前研一×堀江貴文 対談

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コメント

Manjii902 つくづく正論。 2年以上前 replyretweetfavorite

ayako_0802 大前さんが書いた、原発を再稼動させるためのレポート、ぜひ拝読したいな。とても興味がある。 4年以上前 replyretweetfavorite

ko_kishi "大前 つまり、私は綿密に分析・調査したレポートをもって、東京をこういうふうにして変えたいといったんですよ。だけど、それには新聞記者も含めて興味がないんです。" http://t.co/nvSHMqLEdo 5年弱前 replyretweetfavorite

ko_kishi "大前 日本はLNG(液化天然ガス)を世界で一番高い値段で買ってるし、石炭も80ドルぐらいで買っている。つまり、足元をみられているんですよ。向こうは、日本が焦っているのもわかっているしね。" http://t.co/nvSHMqLEdo 5年弱前 replyretweetfavorite