第2回】「何事も想定してはいけない」が福島の最大の教訓

世界的な経営コンサルタントであり、オピニオンリーダーである大前研一さんと、『ゼロ――なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)を刊行したばかりの堀江貴文さんがくり広げる刺激的な対談が始まりました。元原子炉設計者と、現ロケット開発事業者であるエンジニア二人だからこそ語りつくせるテクノロジーの可能性。日本の未来を切り拓くにはどうしたらいいのか。徹底的に語っていただきました。今回は、原子炉の設計については、想定外をとことん考えぬかなければいけないというお話です。最終回の第6回まで一気に、毎日連続更新です!

「想定外」を考え抜けば、危険は極限まで回避できる

大前研一(以下、大前) 私は3・11後、さながら一人事故調のように福島原発事故について調べていたんです。
 そんな寂しい作業をやった理由はね、東電も国も事故の原因を明らかにしないで、「想定外の津波がきました」と言っていたけれども、「本当に想定外の津波がきても止める方法はなかったのか」というのが最初の疑問があったからなんです。そのために民主党の細野豪志さんに頼んで、日立と東芝と東電の技術者を秘密裏に私のところに詰めてもらったんです。彼らに私の詰問に耐えてもらって、そこで、280ページのレポートを書いたんです。

堀江貴文(以下、堀江) それは、本当にすごいことですよね。

大前 実は今度の事故を分析すると、防ぐ方法はかなりたくさん見えてくるんです。大地震と津波によって事故が起こったっていうことはものすごく大変な事態なんです。けれども、科学という観点から見ると、堀江さんが言うとおり、地震や津波、テロリストや飛行機事故なんかの想定外のことが起こっても、大丈夫な目処を予めつけられたらいいわけです。まぁ、大型隕石が周辺100kmに落ちちゃったら、その時点で人間も死にますから終わりですけど。隕石以外の事態では大丈夫だっていう目処がつくなら、原発だって前向きに考えていいんじゃないかと思うんです。
 それでも日本人がどうしても「原子炉はダメだ」というんだったら、それに代わる方法を考えないといけませんよね。「節電を3割やる」とかいろんな方法があるんですけど、それを考えなきゃいけません。

堀江 でも、仮に原発は動かさないにしても、いまある使用済み核燃料の問題はどうするんですか?

大前 福島の核燃料()の場合、1,2,3号炉では燃料棒が溶けちゃって、炉心溶融どころか、格納容器の底までメルトスルーして堅いうんこのように下にたまっている。これは簡単には取り出せないので10年以上待たないと取り出せる状態にはならないでしょうね。ま、これはまた別の問題なんですけどね。
※福島の核燃料問題:11月8日より、福島第1原発4号機の使用済み燃料プールから計1533体もの燃料を取り出す人類史上初のスケールの作業が開始予定。プールに沈んでいる大量のガレキを避けながら、長さ約5m5、重さ約300kgの燃料集合体を1本ずつ、1年かけて1500回本以上も取り出す。燃料棒が崩れれば、付近には核分裂生成物質が放出される可能性がある。

堀江 福島以外の所ではいかがですか?

大前 いま、日本の場合は、各原子炉敷地のなかに使用済み燃料を貯蔵していますから、それをやっぱり青森県の六ヶ所再処理工場まで持って行って、再処理する必要があるんじゃないでしょうか。

堀江 なるほど。

大前 ただ、日本の場合には、原発に関して2つのデリケートな問題があります。まずひとつ目は、プルトニウムを国内に持って貯蔵しておくというのが暗黙の国家ポリシーだったんです。それをすぐに核爆発、核弾頭には使わないので、ウラン酸化物と混合させたり、再処理しているんですよね。そして、残った放射性廃棄物をガラスで固形化する。これにはようやく成功したわけですが、こいつを永久貯蔵として、だいたい地下1000mの深さに1000年貯蔵する必要がある。
 このプロセスのなかで最大のネックは、これらを1000年貯蔵する場所がないんです。日本のすべての自治体がその貯蔵場所を打診された上で、ノーと言っている。青森県も中間貯蔵までは受け入れたが「最終貯蔵だけはいやだ」といっているんです。

堀江 それはどこも嫌だと言いますよね。

大前 ただ、技術的な目処はついたので、ここから先は埋める場所となるロシアとの関係が重要になります。平和条約は大前提になりますけど。再処理してガラスで固形化した放射性廃棄物にはプルトニウムは入っていませんので、それを置かせてくれるだけで、非常に助かるわけです。

堀江 ほかにも、モンゴルに置くという話もありましたよね。

大前 私はロシアのツンドラ地帯のほうがいいと思っています。なぜならツンドラ地帯は地殻が動かないので。モンゴルは資源開発もあるでしょうし、地下水なども今後動く可能性があるので、少し危ない。あと、ツンドラ地帯には100km以内に誰も住んでいないという場所がありますので、そういうところを借りるといいんじゃないでしょうか。いずれにしても、それはまぁ、50年とか100年の単位の仕事なんですよ。だから、当面は各原子炉の使用済み燃料を青森県に持って行って、再処理する必要があるでしょうね。

堀江 ただ、青森でも、原発の再稼働が前提じゃないと嫌だみたいな話もありますよね。

大前 正直、あそこだけだと能力的に日本中の使用済み燃料が全部きてしまったら、全然足りないんですよね。だから、しばらくはそれぞれの施設のなかに置いておくしかないんです。

堀江 それはそれで危ないですよね。地震のときとか。

大前 そこは強化しないといけないですね。今回以降、津波対策をいろいろとっているので、大丈夫だと思いますけど。地震そのものに対してだって、そんなに強くないんですよね。燃料貯蔵庫っていうのは、強くできていないんで。だから、それについて運営側の人たちに色々と質問をしていくと、まぁ極端な答えは「そういう地震が来ないことを祈る」ということになってしまうんですよね。

堀江 やっぱりそういうことになりますよね。

大前 だって想定してつくってないんだから。でも原子炉について「想定外の津波でした」っていうのは間違いで、原子炉の設計においては、「何事も想定をしてはいけない」っていうことが福島の最大の教訓です。つまり、想定外のことが起こると、それは取り返しがつかないわけです。想定外のことが起こった時にでも、止められないといけないわけですね。何があっても冷やさなきゃいけないんですよ。
 だから私の提案は、万が一のことが起こっても、100%冷却できるシステムを作ること。外部電源や非常用電源が止まっても冷却できることを前提にした施設に変えるという具体的な提案もしています。各社ともいまはそういう方向に改築・修繕してくれています。

堀江 なるほど。

世界中に通達が出ていた「原発の全電源喪失時対策」

大前 もうひとつ、テロリストの問題がありますよね。テロリストっていう場合、日本は関係ないという人も多いかもしれませんけれども。

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本気のテクノロジーが世界を変える—大前研一×堀江貴文 対談

大前研一 /堀江貴文

世界的な経営コンサルタントであり、オピニオンリーダーである大前研一さんと、『ゼロ――なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)を刊行したばかりの堀江貴文さんがくり広げる刺激的な対談が始まりました。元原子炉設計者と、現ロ...もっと読む

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serina329 事故が起こった後「だからやめよう」っていうのは敗北思想。 科学の歴史はそこから学んで、これからどうやってこういうものを防げるのかって考えて進歩していくもの。 https://t.co/TxfAMF0wAW 4年以上前 replyretweetfavorite

citronlemon 「何事も想定してはいけない」が福島の最大の教訓| 4年以上前 replyretweetfavorite

ko_kishi 「何事も想定してはいけない」が福島の最大の教訓| 4年以上前 replyretweetfavorite

KAYSATOH 「想定外の津波がきました」と言っていたけれども、「本当に想定外の津波がきても止める方法はなかったのか」というのが最初の疑問・・・「何事も想定してはいけない」が福島の最大の教訓【大前研一×堀江貴文 対談】https://t.co/Rg3ig5RxoJ 4年以上前 replyretweetfavorite