第1回でお話しした通り、IT社会の発達に伴い、昭和的な「画一的な価値観」は徐々に崩壊していきました。代わりにそれぞれの個人が自分の価値観を大切にするという、「自分の気持ちがなによりも大事」という考え方が、徐々に一般的なものとなっていったのです。そんな「自分だけの価値観」を持つ時代は、思いのほかシンドイ時代であることや、ネットの本質は、自分の全人格を丸裸にして、世界中に放送してしまう、恐るべき道具であることなどを解説しました。ネット時代は、今まで以上に個々人の人格や価値観といったものが、重要になってくるのです。
ネット時代に必要不可欠な、健全(?)な自尊心
では、そんなネット時代に必要な価値観って、どのようなものでしょう? それはおそらく、左右を見渡して、他人様の意向に振り回されるようなものではないでしょう。
「自分は自分のままでいい」「ナンバーワンじゃなくてオンリーワン」。
こんなセリフが、1990年以降よく聞かれるようになったのは、偶然ではないでしょう。子どもの頃に適切な承認が得られないと、「アダルトチルドレン」と呼ばれる、トラウマを引きずったまま、精神的に未熟な大人になってしまう……そんな認識が一般的になりました。
「自尊心を育もう」「子どもをそのまま認めてあげる」「あなたはあなたのままでいい」
育児書にもそんな言葉が踊るようになり、子供を叱ることは、まるで罪悪のような雰囲気になってきました。いまや電車の中で騒いでも、食べ物の好き嫌いしても、レストランで大声を出しても、そんな「ありのままの自分」を咎めてはいけないような雰囲気です。また「過度の励まし」や「自助努力の強要」もタブーといった雰囲気が形成されたように思います。
90年代からこういった子育てが、ごく一般的となりました。子供の行動をそのまま認める子育てが、それほど正しいのなら、現在20歳くらいまでの青少年は、大半が自尊心に満ちあふれ、社会の最先端で大活躍していても良さそうです。
ところが……
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