引き算発想で満足度を高めている
原田 皆は「さとり世代」の特徴をあげてくださいって言われたら何と答える?
慶應大・2年・女 車とかそういうモノに対しての物欲があまりない。
原田 一般的によく言われているのが、車を買わない、お酒を飲まない、海外に行かないなど、いわゆる「消費離れ」。
慶應大・2年・女 上昇志向というか、社長になりたいとか、おカネを稼ぐという意欲はそこまでないのかな。
慶應大・2年・男 恋愛にも淡泊。
早稲田大・3年・男 とにかく節約。コスパ(コストパフォーマンス)意識が高い。
原田 さとり世代は、クールなコスパ世代と。
横浜国大・3年・女 私はインドア世代だと思います。外に行くの自体が面倒臭いっていう人が増えていると思う。家の中にいてもテレビゲームとかあって遊べるし、ネットサーフィンしていれば一日中時間がせるし、別に外に行かなくてもいいから。
原田 それもコスパっちゃコスパだね。外に行くと、疲れるし、お金もかかるからね。
白百合女子大・4年・女 さとり世代は、とにかく楽しければいいじゃなくて、リスクの少ないほうを選ぶ。例えば、お酒を飲み過ぎて吐きまくって、それでも楽しいっていうよりも、自分がスマートなまま終われるほうを選んでいるのかな。
早稲田大・3年・男 さとり世代のキーワードとして「リスクヘッジ」というのはわかりやすい。そもそもリスクヘッジというのはビジネス用語として悪い意味のものではないので、さとり世代は賢くなっていると言えるのではないでしょうか。
原田 その行動・消費をすることで、どれだけプラスがあるか、という見込み期待で物事を考えるんじゃなくて、マイナスがないか、という見込み損失で考えると。足し算発想じゃなくて、引き算発想なんだね。これも経済成長を実感できたバブル世代を含めたそれより上の世代の人と、不景気しか知らないさとり世代の最たる違いかもしれないね。この発想が、消費停滞の根源にあるのかもしれないね。
桃山学院大・2年・女 引き算思考になっているというのに同感です。メリット・デメリット、どっちが多いのか、という考え方は私もよくします。大きなけに出ることができないのがさとり世代の特徴だと思います。消費行動においても、「ブランドの服を1着買うより、ファストファッションで安い服を何着も買う方がお得だし、着回しもきく」という主婦みたいな考え方かもしれません。
早稲田大・4年・男 妥協世代。ここら辺でいいやって自分たちで決めてる。上の世代から見ると、それでいいのって感じなんでしょうけど、僕たちの中では、満足度はすごく高くて、そこにギャップがある気がする。
原田 今の二十代の満足度が、他の年代の人たちよりも高く、かつ、過去の二十代よりも高くなってきていることは、いろいろなところで指摘されているね。さとり世代は、引き算発想だから、日々の生活の中でマイナスなことが起こらないと満足する精神構造になっているのかもしれないね。日々、足し算発想でプラスのことを起こすのはけっこう労力もかかって、うまくいかないことも多いから、満足度が高い日があったり、低い日があったりしそう。足し算発想だと平均すると、満足度は低いかもしれない。でも、「つつがない日常」に満足するのであれば、無理な行動をしない限り平均点は高くなるわけで、これがさとり世代の満足度が高い理由かもしれないね。
さとり世代はモノより思い出
早稲田大・4年・男 さとり世代は消費しないとよく言われるけど、意外に消費をしている気がするんですね。欲しいものの対象が変わっただけで。実はさとり世代の消費は、ちっちゃくてもけっこう活発に行われているんじゃないかと。