前体重で戦うか、後ろ体重で戦うか

11月の欧州遠征をオランダに2-2、ベルギーに3-2と、優勝候補国とシード国を相手に1勝1分という大きな成果を挙げた日本代表。来年のワールドカップブラジル大会へ向け、期待が膨らむ2連戦でしたが、残り6ヶ月、本大会に向けてさらにどんな準備が必要なのか? スポーツジャーナリストの中西哲生さんの新刊『日本代表がW杯で優勝する日』(朝日新書)から内容の一部を紹介します。

 ザッケローニ監督が率いる日本代表は2011年1月、チーム結成半年後のアジア杯に優勝し、W杯予選を戦う中で少しずつメンバーを固めてきた。2012年6月の最終予選の最初の3戦を2勝1分けで乗り切ったところまでは良い状態だったが、フランス、ブラジルと戦った同年秋のヨーロッパ遠征のころから、チームのバランスが少し崩れてきた感がある。

 0‐4で負けたブラジル戦はタテに長い距離を走られ、それにうまく対応できず、守備のバランスが崩れた。また先に点を取られ、前に出なければならない状態で、強豪国の追加点を取るうまさにも直面した。

 そんな中、2013年3月にヨルダンに負け、少しずつバランスが崩れてきたことの影響が結果に表れた。6月のコンフェデレーションズ杯はブラジル、イタリア、メキシコと強豪相手に自分たちの良さを出すサッカーで3連敗を喫した。8月のウルグアイ戦も前半27分と29分に連続して失点。コンフェデレーションズ杯のブラジル戦、メキシコ戦と同じように、先制点を与え、2‐4で敗れた。

 ここで言うバランスとは、「チームとして前体重で戦うのか、後ろ体重で戦うのか」ということを指している。

 日本がW杯優勝を目指す中で重要なことは、世界のトップに対して相手の良さを消して勝つサッカーだけでなく、自分たちの良さを出して勝つサッカーにトライすることだ。そうしなければ、どこまでが世界トップクラスのチーム相手に通用し、どこまでが通用しないかわからないからである。日本が自分たちの良さを出そうと前体重で臨んだのは、悪いことではない。その結果、通用した部分もあったし、通用しなかった部分もあった。それを考えると、W杯本大会半年前くらいまでは、自分たちのサッカーを貫き、少々バランスを崩すことも仕方ないと感じる。

 同時に、コンフェデレーションズ杯からウルグアイ戦までの強豪相手との一連の4試合での戦い方、つまり自分たちの良さを出す戦い方で、2014年のW杯本大会で、勝ち点3を取れるかというと、それは厳しいと感じた4戦でもあった。

 では、どう戦えば良いのか。決して、ラインを下げて引いて守るとか、プレスをかけないという意味ではなく、全体的に前体重になっているチームを、もう少し後ろ体重にするという感覚が必要かもしれない。この4戦では自分たちの良さを出そうと「前6割、後ろ4割」と、攻撃への比重を少し高めに持って戦い、相手に先制点を与えていた。つまり現時点での日本代表は世界のトップクラス相手に前掛かりになれば、先制点を取られる可能性が高いことが、この4戦を通じてわかったわけだ。

 2010年W杯南アフリカ大会での日本代表はかなり守備的で、「前3割、後ろ7割」という印象だった。しかし今後は、そういうサッカーにはならないはずだ。それは我々日本サッカーが、世界と徐々に対等にやれるようになってきている証しでもある。ただ、それがわかったうえで、あえて体重をやや後ろ気味にする。本大会仕様を考えると、「前5割、後ろ5割」か、少し後ろが多いくらいのバランスがいいのではないかと考えている。

 将来的には、前体重と後ろ体重の両方を使い分けなければならない。「今日は前6割、後ろ4割でいこう」とか、「今日は4割、6割で」という感じだ。時間帯によって変えられることも重要である。ただ、今の時点では試合に入ってから1‐0になるか、0‐1になるかのところまでは、やや後ろ体重になるくらい慎重でも良いのではないか。第2章で書いたが、過去のW杯で日本が勝った試合はすべて先制している。同点ゴールは2002年のベルギー戦の鈴木のゴールだけだ。追いつくのは難しく、勝つために先制点が重要なのは、現時点では揺るぎのない事実である。

 これから本大会に向けては、重心を前に置くのか後ろに置くのかという試合全体の体重配分、また試合の中でリードした時、リードされた時など局面ごとの体重配分を、11人が同じ意識で戦えるようになることが求められる。決して守備に徹するわけではなく、守備意識を高めながら前体重になることも可能だ。仕上げの段階で、それをザッケローニ監督がどう操っていくかを見守ろう。

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 日本代表のザッケローニ監督は来年のW杯ブラジル大会出場という第一段階をクリアし、本大会の準備に入っている。

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日本代表がW杯で優勝する日—列強に打ち勝つための提言

中西哲生

私たちは死ぬまでに日本代表がワールドカップトロフィーを掲げる光景を目の当たりにできるのか? その問いに確信を持ってイエスと答えるのが、テレビ朝日系「Get sports」などで論理的なサッカー解説でおなじみのスポーツジャーナリスト・中...もっと読む

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