糸井 でもさ、加藤さんの問題意識は痛いほどわかる(笑)。
加藤 ははは。
糸井 たぶん、ちゃんと答えてると思いますから。なんでも聞いてください。
加藤 ありがたいです。では、ほぼ日について聞かせてください。
糸井 はい。
加藤 いまのほぼ日って、かなりきれいなエコシステムができているというか、市場も商品も物語もぜんぶそろっていて、すごくいいかたちで循環しているように見えます。その状況に対して、糸井さんはこれでいいと思ってらっしゃるのか、これじゃダメだと思ってるのか、あるいは「こんなことがやりたい」という将来像があるのか、そのへんの話を聞かせてください。
糸井 そんなにエコシステムじゃないかもしれないですね。市場を相手にしているかぎりは、やっぱり「ファンクラブ」じゃないんでね。
加藤 なるほど。
糸井 ファンクラブじゃダメなんですよ。ファンクラブだと思ったら、つくるものに対して甘えが出ます。
加藤 うーん、なるほど。甘えのない関係を築く。
糸井 その意味では、読みものでも、お金をもらっている商品でも、市場にさらされているのは同じなんで。いくら当たり外れが付きもののコンテンツとはいえ、仮に「縫製がめちゃくちゃです」ってクレームがあったら、それは完全にぼくらのせいです。あるいは、縫製は大丈夫だけど検品漏れがあってそのままお客さんに届いていたら、ぼくらの信用を損なうことになる。そこのところにはやっぱり、より大きなコストをかけていかなきゃなんないですよ。
加藤 はいはい。
糸井 あとは「もう売り切れたんですか?」というクレームも、頭の痛い問題で。
加藤 もったいないですからね。
糸井 うん、それにビジネスチャンスが失われるというクールな問題だけじゃなくって、「嫌いです」っていわれるかもしれないわけです。
加藤 ああ、そうか。
糸井 「あんたたちは何様のつもりなの? すぐに売りきれるものを11時に同時に出して、いくつ売ってるのか知らないけど、たった4分で売り切れるものを『売り物』っていっていいんですか?」と叱られるわけですよ。あるいは、ある色のものが残っちゃって、ある色のものは即品切れとか、そんなことだらけですよ。
加藤 色やサイズを品切れや在庫が出ないように揃えるのは、たいへんですよね。
糸井 それは「うーん、弱りましたねえ」というところで、やっぱり、無闇に善処するわけにはいかないんです。
加藤 善処するわけにはいかない、とは?
糸井 答えは、在庫を増やすとかそういう話じゃなくって、もっと別のところにあるはずなんですよ、きっと。要は「でも、好きです」っていってもらえるのがいちばんなんです。
加藤 はい。
糸井 たぶん、ね? 文句はいったけど「いつ買えるの、次はっ!」とか。
加藤 でも、それとファンクラブの違いはどこなんでしょう?
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