第4回】半分は教えられるな、と気がついた。

「社長の仕事とはなにか?」という疑問を、今も考え続けているという糸井さん。もともとフリーのコピーライターだった糸井さんが、「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げ15年。フリーではなく、あえて組織のなかでクリエティブをすることのおもしろさについて、糸井さんは語ります。(構成:古賀史健

糸井 だからね、加藤さんも立派な社長になろうとするのは早めにあきらめたほうがいいのかもしれない。

加藤 ああー。糸井さんも最初はなろうとしたんですか?

糸井 やっぱりね、「悪いな」って気持ちはどっかにあるんです。ぼく、引越の手伝いなんか、ぜんっぜんしないですから。よその中小企業を見てると、そういうところでものすごく張り切る社長さんがいるんですよ。

加藤 わかります。

糸井 だから、小さなデザイン会社の社長さんと釣りに行くときなんかに、向こうが「きょうはちょうど会社の引越なんですよねえ」と困り顔してたら、「そんなの、ちゃんと休まなきゃだめだよ」っていってあげるんです。

加藤 糸井さんはそれで通してるんですか?

糸井 そう、まさにその社長さんから同じこと聞かれるわけ。そしたら「うん、こころはすっごく痛むんだよ」って(笑)。

加藤 (笑)。

糸井 でも、「その痛みを、おれはもっと稼いで返すから」って、力にしなきゃだめなんですね。引越で役に立たないおじさんやってるよりは、給料だけは遅配しないぞって。そっちが社長の仕事ですから。

加藤 なるほど。

糸井 こころの痛みはファイトに変えるんです(笑)。

加藤 わはははは。

糸井 これ聞いただけでちょっとラクになるでしょ?

加藤 いやあ、ラクになりました。

糸井 社長をやってるとさ、「悪いねー」って思うことだらけなんですよ。それぞれの立場にいる人が、それぞれの場所で努力していますし。知恵は出さないけど汗をかいている人もいれば、知恵を出してるけどうまくいかない人もいる。そのとき、「社長のいちばんの仕事はなあに?」という疑問については、ずーっと考えてなきゃいけないわけです。正直いうと、いまでも考え中です。

加藤 社長のいちばんの仕事かあ。

糸井 で、いちばん小さいまとめ方は「給料を払うこと」なんです。

加藤 ああー、それはそうですよね。

糸井 それ以外がうまくできても、給料払わない社長なんて、大っ嫌いですよ、みんな。

加藤 うん、うん。

糸井 たとえば、すごく人柄のいい社長がいて、もう一方で人柄は悪いけどバンバン給料上げますという社長がいたら、みんな給料上げる社長についていくもんですよ。それで、こういう話は社員を前にいいます、ぼくは。

加藤 なるほど。

糸井 そうはいかないけどね、もちろん。そうはいかないんだけど、その現実というか、人間感を、「社員の側」と「経営してる側」の両方から養っていかないと、落ち着かないんですよ。そして落ち着かない人が社長をやってると、不安になるんですよ。それでひたすら一所懸命やってる振りをするんです。

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糸井さん、ぜんぶ聞いてもいいですか?

cakes編集部

9月からcakes1周年記念として、さまざまな企画を行ってきました。おおとりを飾るのは特別インタビューです。この1周年に、webメディアの大先輩 であり、大きな目標である”あの方”に話をうかがいたい。そんな気持ちで手紙をしたためた、c...もっと読む

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コメント

skyazurer だって「書かないとつらくなっちゃう」っていう個性がないと、作家なんてできないわけですよ。| 4年以上前 replyretweetfavorite

tzk2 他3コメント http://t.co/NILGGHFdcV 4年以上前 replyretweetfavorite

tzk2 他3コメント http://t.co/NILGGHFdcV 4年以上前 replyretweetfavorite

kagakaoru ぜんぶは無理です。人格とか個性によるところが非常に大きいですから。だって「書かないとつらくなっちゃう」っていう個性がないと、作家なんてできないわけですよ。 4年以上前 replyretweetfavorite