第3回】おもしろくて、いやな「社長」という仕事。

個人的な動機から「ほぼ日」をはじめた、という糸井さんは、同時に会社という組織の「社長」にもなりました。糸井さんが社長として考えたのが、会社を「おもしろい場所」にすること。組織を大きくしたり、会社としての透明性を上げると、そのおもしろさが損なわれてしまうものです。糸井さんはどのようにして「おもしろい会社」を作ったのでしょうか。(構成:古賀史健

糸井 個人でスタートして好き放題をやった人って、山ほどいるわけですよ。でも、たとえばその方が亡くなられたら、どんなにすごい作品がたくさんあったとしても、あとに残った会社は版権を管理するだけの会社になっちゃいますよね。そこに集まった社員にとって「それがたのしいか?」ということですよ。

加藤 「たのしいか?」という問いかけ。

糸井 ええ。ぼくの場合は、それなりにたくさんの人たちを「ここにきたらおもしろいぞ!」って集めたんで。

加藤 なるほど。おもしろくする責任が。

糸井 ある。だから、そこの問いかけに対して、つまんない会社になると困るわけです。つまり、いまここにいる人たちの力が足りなければ、その「足りない力を借りてくる」。それだけの力を持ちなさい、というのが上場じゃないかと思うんです。

加藤 たしかに、そのとおりですね。

糸井 こないだドワンゴの川上量生さんにお会いしたんですけど、たぶん川上さんは社長になりたくって社長になった人じゃないんですよね。そこはぼくと似てると思った。だけど、どっかの段階でそのしくみに乗っかりましたよね、ゲームプランとして。それでけっきょく、よそから社長さんを連れてきましたよね。

加藤 ええ。

糸井 もしもあの会社が上場してなかったら、社長さんを連れてくることもできなかったし、何億円もの赤字を出すイベント(ニコニコ超会議)なんてつくれなかったと思うんですよ。そう考えると、やっぱり戸籍を持ってないと保険証もおりないし、みたいな感じで。

加藤 ほぼ日を、よりパブリックな組織にしていこうということですね。

糸井 そうですね。もちろん、パブリックなものにしていこうとしたとき、上場みたいなことを考えたとき、指折り数えれば不自由なことはいっぱいあります。でも、みんなが折り曲げてるその指は、案外戻せるんじゃないか、という気もしているんです。「みんな、簡単に指を折りすぎてるんじゃないの?」と。

加藤 それはたとえば?

糸井 たとえば、上場の条件に「お金の流れを透明化する」という話があったとき、みんな「そんなことしたらやりにくくなるよ」っていいますよね? 気持ちはわかります。むかしのぼくだって、同じようなこといったかもしれない。でも、ちょっと待てよ、と。みんな不自由って言葉、簡単に使いすぎじゃない? その言葉でごまかしてない? という気持ちがあるんです。

加藤 なるほど。工夫次第で、不自由さを感じないまま上場することも可能じゃないかと。

糸井 うん。だから、加藤さんの「別にただ儲けたいわけじゃないんです」という話も、そのとおりなんだけど、もし儲かっちゃったときにそのまま返すかといえば、返さないんですよ。返すお金があったら、なんか使いたいことを見つけたほうがいいんですよ。

加藤 ええ、ええ。

糸井 誰かの力になるにせよ、場をつくるにせよ。土地に置き換えたらよくわかるんですけど、個人で買える土地って、せいぜい100坪ですよね。でも、企業だったら1000坪でも1万坪でも買えます。より大きな場所で、大きなことができる。それでいまの時代、100坪のスペースにもうすぐ50人になろうという社員がひしめいていたんじゃ、やっぱり「おいでよ」って声かけられないな、というのが大きいんです。

加藤 では、最初から会社を大きくするプランがあったんですか?

糸井 いやいや。むかしは人が集まること自体を拒否していましたから。目に見える数じゃないと無理だと思って、7人が限度だとよくいっていました。

加藤 それがいまや50人に。

糸井 そう、7人までは覚えられる。でも7人が7組あっても覚えられるから7×7で49人までは大丈夫かもしれない。ぼくも含めて50人ですよね。アルバイトさんまで入れたらもう少し増えちゃうんですけど、いまがちょうど50人の規模です。でもいま、またあらたに採用をかけている。ということは、やっぱり「入れたい」なんですよね。

加藤 じゃあ、今後はもっと増えていく?

糸井 無限に増やすわけじゃないと思います。でも、たとえば適正が100人なのかというと、そこはわからない。80人かもしれないし、なにもわからないです。

加藤 あのー、ぼくはいまcakesを始めて1年半くらいで、社員とアルバイトさんまで入れると16人いるんですね。もともと会社員なので、組織を運営するなんてやったことがないわけです。だからそのへん、まさに試行錯誤しているところで。

糸井 たいへんなことですよ。

加藤 それでぜひお伺いしたいんですが、クリエイティブな仕事って、話し合ってやれるものじゃないところもあると思うんです。

糸井 うんうん。

加藤 それでも、組織としてクリエイティブをやっていかなきゃいけない。ほぼ日というチームは、まさに「糸井さんひとりのクリエイティブ」から出発して、いまは「組織としてのクリエイティブ」を実現できているように見えます。そのへんをどうやって実現していったんだろう、というのがほんとうに疑問で、ぜひ教えていただきたいところなんです。

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糸井さん、ぜんぶ聞いてもいいですか?

cakes編集部

9月からcakes1周年記念として、さまざまな企画を行ってきました。おおとりを飾るのは特別インタビューです。この1周年に、webメディアの大先輩 であり、大きな目標である”あの方”に話をうかがいたい。そんな気持ちで手紙をしたためた、c...もっと読む

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コメント

yanaken5485 胸痛い。。。  3年弱前 replyretweetfavorite

w1nteroot 『みんな不自由って言葉、簡単に使いすぎじゃない?その言葉でごまかしてない?』https://t.co/a8mMWcu6EP ほぼ日ではいつもインタビューする側の糸井さんが、される側になってておもしろい。 5年弱前 replyretweetfavorite

yuki_yamapod 何か、めちゃめちゃ面白くなってきたなw/(第3回)糸井さん、ぜんぶ聞いてもいいですか? https://t.co/IdpqX42GEA 約5年前 replyretweetfavorite