​岡田育さんと「萩尾望都のマンガの話」と「親の話」をした【オタクとオナニーと物語とセックス】

前回、まさかの「オカズ」ネタまで飛び出した、AV監督二村ヒトシさんと、連載「ハジの多い人生」の岡田育さんとのAV模擬面接対談第3回目。岡田さんにとって「人生で最初に心に刻まれた漫画」だったという萩尾望都の『ポーの一族』の話に始まり、岡田さんのご両親の話まで。「AV女優を面接で泣かせる男」として有名な二村さんが、ぐいぐい迫ります。

子どものころ、すぐにでも大人になりたかった

村 幼稚園か小学校のころに読んで今でも強烈に覚えている【人生で最初に心に刻まれたマンガ】って、なんですか? 僕は永井豪の『キューティハニー』『ドロロンえん魔くん』なんですが。

岡田 「これだ!」と思ったのは萩尾望都さんの『ポーの一族』ですね。

二村 岡田さんが生まれるより前に発表されたマンガだよね。

岡田 そうですね、1970年代の作品です。自分で買ったんじゃなくて、親戚のお姉さんたちがお嫁に行くというので彼女たちの本棚から譲り受けたものなんです。それまでは好きな漫画といえば『ドラえもん』だったのに、このとき花の24年組の作品を中心とした少女漫画に初めて触れて、夢中で読むようになりました。7歳のときです。

二村 1964年生まれの僕が小学校6年とか中学1年のころ、なんと少年チャンピオンで萩尾さんが『百億の昼と千億の夜』というSFを連載してて、われわれの世代のオタク少年は、それで少女マンガの絵と出会うんです。ただ僕はそれから、萩尾さんが活躍してた小学館系の少女マンガ誌ではなく、『はみだしっ子』や『パタリロ!』や、それこそ『ガラスの仮面』が載ってた「花とゆめ」という雑誌にハマっていくんですが。『スケバン刑事』とかも連載されてて、どっちかというと男の子も読みやすかったから。
 『ポー』は少女マンガの金字塔だよね。どうしてあんなに評判になったんだと思います?

岡田 不老不死の吸血鬼の少年少女が、いつまでも13歳14歳の姿でさまざまな時代を渡っていく物語ですから、「私もエドガーやメリーベルのように時を止めてしまいたい」と願う思春期の読者が多かったんじゃないでしょうか。「永遠に美しく、汚れなき少女のままでいたい。いまこのときが永遠に続けばいい」という憧れがあるのかな。その証拠に、今でもまだ「続編を描いてほしい」って言う信者たちも多いんですよ。私はリアルタイムで読んだわけではないせいか、ちょっと距離があって、全然そんなふうに感じないですけど……。

二村 岡田さんは、どのへんに感情移入したの?

岡田 私が惹かれたのは、幻を追い続ける人間たちのほう。子供だった女の子が大人になりおばあちゃんになり、死んで子や孫に物語が受け継がれていく。ずっとエドガーとの再会を待ちわびていた少女が、それを諦めて大人になるシーンがとても好きでした。「そうか、私だって人間で、エドガーやメリーベルの側じゃないんだ、いつまでも子どものままではいられないんだ」と痛感して。「いつか大人になるために今があるんだ」と思わせてくれたのが、あのマンガだったんですよね。続編なんて要らない、完璧な作品だと思います。

二村 変化したくない、というのは少女の願望なのかな。

岡田 「少女の時間は永遠」……あの作品をそう捉える人たちも多いでしょうね。「いつか大人になってしまう」ことを、私のように「大人にならなくちゃ」とまで考えるのは、主流ではないかもしれません。竹宮惠子さんの『地球へ…』も大好きで、こちらも、老化しないミュウたちではなく、その存在に苛まれながら着実に老いていくキースのほうに惹かれたんですね。

二村 岡田さんは「自分が大人になっていく」ってことを知っている子供だったんだろうか?

岡田 「どうせなるなら早く大人になりたい」と思う子供、でしょうね。『Dr.スランプ』に皿田きのこっていう女の子が出てくるんです。まだ幼児のくせにいろいろ大人っぽくて、周囲に対してすごく生意気に「あんたイモね」「ダサイわね」って言うんですよ。周囲の大人から「マセガキの育ちゃんそっくり」と言われてて、たしかにメリーベルよりこっちのほうが共感できましたね(笑)。

二村 なんで岡田さんは大人になりたかったんだろう?

岡田 大人になったら「子どもだから」とバカにされることもないし、自分の主張も通るわけだし。「大きくなればなるほどいいことがあるんだろう」って思っていたんですよね。だから、「ずっと子どものままでいたい」って言う子たちに対しては「ふん、ガキだな」と思っていたんですけど、いまになってみると、どっちが大人だったのかわからないですよね。

二村 なるほど……。じゃあ「大人になりたくなかった」子供たちには、どんな子が多いんだろう?

岡田 部活や恋愛など、現在進行形で打ち込める何かを持っている子ですかね。そういう子たちは今が楽しいから、「この時間が少しでも長く続けばいい」と願うんじゃないかと……。私は特に目的もなく生きていたので、「とっとと早く義務教育を終わらせてしまいたい!」っていつも思っていました。「人生の面倒くさいものをすべてすっ飛ばして、早く次に行きたい」って。でも、「子どもでいられる時間は限られている」ということの意味を真に理解していたのは、私のようなマセガキではなく、彼らのほうだったのかなと、今は思います。

二村 いまでも「早く次に行きたい」っていう気持ちを持つことはあります?

岡田 いまは、あまりそういう情熱はないですね。その生き急いでいた感は多分、時代的なものもあるんでしょうね。時まさに1980年代後半、バブル絶頂期の東京では、大人たちの世界がものすごくキラキラして見えたから。レベッカの歌詞じゃないんですけど、「急がなきゃ出遅れちゃう!」っていう気分です。「私も早く芝浦とか六本木とかで夜遊びしたい!」みたいな。

二村 自分が親には、なりたいと思ってた?

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キモい男、ウザい女。

二村ヒトシ

アダルトビデオ監督・二村ヒトシさんが、男女の関係性を探り、自分自身を語っていく連載です。現代の日本に生きる私たちほぼ全員が「キモチワルい男」であり「めんどくさい女」であるという、恐ろしすぎる【見立て】からはじまるこのお話。なぜ現代の恋...もっと読む

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コメント

chizthiz https://t.co/VnHY31kHmd 6ヶ月前 replyretweetfavorite

sadaponta >親ってさ、わりと考えなしで、そういう呪いをかけるよね、自分たちの子供に。 胸を突いた。 4年以上前 replyretweetfavorite

kiex 二村さんが、彫り深くてローマ人顔なんですよね。 4年以上前 replyretweetfavorite

tommynovember7 親の「あなたのために」は自分の人生へのリベンジ的なものかも。 4年以上前 replyretweetfavorite