見たことのない、新しい面白さを発見する。リサーチを行う際、それが最も重要であり、そのためには足で現場をはいずりまわることが大切であると述べました。
しかし、ただ単に漠然と現場に出たからといって、面白いものが見つかるかというと、なかなかそう簡単にはいきません。「面白さ」を発見するには、ディレクターとしての勘所のようなものが必要です。
そこでこの章では、「面白さ」を発見するためのコツをいくつかご紹介していきます。
「瀬戸内海の島々」をテーマにした番組なら、普通、アートの島として有名な「直島」をフィーチャーするところですが……(photo:テレビ東京)
戦わずに全力で逃げる
「人の行く 裏に道あり 花の山」
という言葉があります。これは、有名な相場に関する言葉なのですが、もうけたいなら、みんなと違う方にお金をはるべきだという意味です。みんなが買っている時には売る。みんなが売っている時には買うということです。
テレビ番組作りにおいて、「新しい面白さ」を見つける近道も、これに似ています。まず、人が着目しないようなところに目をつけるという姿勢が大切です。
誰の目にもつく大通りではなく、その裏の小径に何か面白そうなものが転がっていないか。渋谷駅ならハチ公口でなく、新南口に何か面白そうなものはないか。そのように目を光らせるということです。
じっさい、人の目につく場所は、すでに他のテレビで取り上げられている場合が多く、「新しい面白さ」を発掘しようとした際、競争率が高く、非効率なのです。このような戦場からはいち早く逃げることが「新しい面白さ」の発掘につながります。
たとえば、「空から日本を見てみよう」という番組で、「瀬戸内海の島々」というテーマをかかげ番組を作ったことがあります。岡山県と香川県の間にある様々な島を空から探検しよう、というものでした。有人島、無人島含め、ほぼ全ての対象地域の島を自分の足でまわりリサーチしたのですが、その時の、「直島」という島と、「釜島」という島が非常に対照的でした。