「ジョージ・ポットマンの平成史」の語り手、日本研究家のジョージ・ポットマン氏(非実在)。同番組では「童貞史」から「友達いないと不安史」まで多彩なオモシロ日本平成史が語られた。(photo:テレビ東京)
おもしろくないと怒られる仕事って?
「お前つまんねーよ、ふざけるな。このカス」
こう、真顔で怒られる仕事があります。テレビを作るディレクターです。大学を卒業した、よい大人が「つまんねーよ」と会議で真剣に怒られる。そして、うっかりその会議がこじれてしまうと、朝方6時ぐらいまで、40近いオジさんも混じってどうしたら面白くなるか、一生懸命考える。部屋中が加齢臭でいっぱいになります。
この本は、テレビのディレクターの仕事について書いた本です。テレビのディレクターとは、簡単に言うと、テレビ番組を作る人のことです。たいていの場合、制作会社やテレビ局に所属して仕事をします。まれに、どこにも所属せずフリーランスでディレクターとして活躍する場合もありますが、概して所属する立場によって仕事の中身に違いはありません。
僕はテレビ東京という小さなテレビ局で、ディレクターをしています。この仕事をしていると、OB訪問や面接で、「テレビを作る仕事につきたい」という方々にいまだによく出会います。
しかし、なぜ彼らはテレビを作るディレクターになりたいのでしょうか? 現在、テレビ業界は、超一級の斜陽産業と言っても過言ではないでしょう。テレビ東京に入社して九年目ですが、ここ数年給料はほぼあがってません。気のせいかボーナスも入社した一年目の時より少ない感じがします。先輩の社員の方などは、昔うっかり組んだローンの支払いが滞り苦労していると聞きます。
かつてテレビがメディアの王様で、ファッションを牽引し、華やかなりしころは、給料もよく、交際費もあったのでそれなりにモテたのかもしれませんが、現在ではそんなことは全くありません。
何となく、テレビは前時代のメディアであり、かっこわるい。「ね~。○○って番組見た?」と聞かれたら、「あー、家にテレビ置いてないから」と答える方がかっこいい気すらします。
飲み会でもモテるのは、商社や外資系、安定感のある公務員ばかり。マスコミ全般が、すでに女子たちの中ではすべってる気がします。もちろん個人の実力も大きいのでしょうが、少なくとも、テレビマンという肩書きだけでモテることは確実にありません。むしろ、軽率である、下世話な人間であるというマイナスイメージが蔓延し、ネガティブな目で見られることの方が多い気がします。
しかも、仕事の時間は不規則で私生活は崩壊します。テレビ業界では一日が24時間ではありません。テレビ局にいく機会があったら、ご覧いただきたいのですが、テレビ局の入り口には会議の時間や場所を記した張り紙がたくさん貼ってあります。その紙を見ると、シレッと「26時~ Bリハーサル室」などと書いてあることがあります。
「編集所」というテレビ番組の最終的な仕上げを行う部屋では、スケジュール表に「10時~33時 ○○様」という表示をよく見かけます。テレビ局の現場の人たちの間では、一日は34時まであるのです。簡単に言うと、寝るな、ということです。
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