ネット広告が急成長中でも、テレビCMや新聞広告がなくならない理由とは?
前回は「ターゲティング広告」がメディアビジネスに与える影響について書きました。既存の紙メディアの広告や通常のバナー広告に比べて、ターゲティング広告やグーグルのアドワーズに代表される検索リスティング広告は、費用対効果が良いため、急激に伸びているとずっと言われてきました。確かに間違っている話ではないと私も思います。
しか〜し、ちょっと待ってください。
そんなにターゲティング広告や、検索連動広告の費用対効果が良いのなら、何ゆえ広告主は、自社の広告予算の全額を検索リスティングやターゲティング広告に割り当てしないのでしょうか?
例えば、トヨタやP&Gは、なぜ全ての広告予算を、グーグルのアドワーズやターゲティング広告に割り当てないのでしょうか?
「×××という新規のネット広告は、最新テクノロジーを活用しているため、費用対効果がイイんです!」と、威勢のいいセールストークを繰り返しているネット広告会社の若い営業マンが多いですが、上記の問いに説得力を持ってロジカルに答えることは、特に業界平均レベルの若いネット広告の営業マンにとっては、案外と簡単ではないように思います。
「キミ、ねぇ、そんなに費用対効果が素晴らしいなら、テレビや新聞も含めて、ウチの100%の広告予算を、その×××とやらいう最新広告に振り向けて見ようと思うが、その場合全体としての広告効果は、今と比べてどれくらいに改善するんだね?」
と、客先で宣伝部長に聞かれて、キチっと即答できるネット広告営業マンは、かなり少ないのではないでしょうか。(「ネット専業」の広告会社の営業マンなら、「アワワ……」となりそうな気がします)
生活者の観点から見ても、広告主の観点から見ても、たったひとつのメディアだけで全ての情報を摂取したり、全ての広告予算をただひとつのメディアに注ぎ込むということはまずありえません。かならず複数メディアが併用され、複数メディアの中で棲み分けつつ、自らのメディアのポジショニング、立ち位置が定まっていくものなのです。
広告予算を3倍に増やしたら、効果が3倍になるのか?
そこで今回は、広告主の視点で複数の広告メディアを使い分ける際の基本的な視点について、全国ネットのテレビCMから検索リスティングまでを包含するような広めの基本フレームについて話したいと思います。