井口皓太(映像作家)→小川勝章(作庭家) Vol.3「どんな庭造りが理想ですか? 」

今回カンバセーションズに登場する井口皓太さんは、デザインオフィス「tymote」の代表を務めるアートディレクター。この秋に、京都を拠点とするクリエイティブエージェンシー「世界」を新たに立ち上げるなど、精力的な活動を続ける井口さんがインタビューするのは、京都の無鄰菴平安神宮などを作庭し、近代日本庭園の先駆者と言われた七代小川治兵衞をはじめ、江戸時代より数々の名庭園を手がけてきた「造園植治」の小川勝章さん。講演やワークショップなどを通して、庭園文化の発信にも力を入れている小川さんに、庭造りの真髄について伺ってきました。

設計図は大切ですか?

Q. 庭を造る時というのは、まず上面図か何かで設計していくのですか?

小川:そうですね。手書きやCADなどで作っていくのが普通で、最近は設計図通りに庭を造っていくことが当たり前になりました。規格品を扱っているとしたら、何十センチの石、何メートルの木というものを設計図通りに据えたり植えることができるのですが、私たちが出合う素材というのは、例えば石を起こしてみたら後ろからとんでもなく素敵な顔が現れるかもしれないんですね。その時に、設計図上は縦に置くはずだった石を横にした方が素晴らしくなることもあり得るんです。ちょっと向きを変えるだけで石が全然違う表情を見せることもあるし、その場合は周りにある石も少しずつ変えた方がいいかもしれない。図面で伝えられることは全体3,4割くらいで、やっぱり後は現場なんです。だからこそ、お施主さんが現場に出てきてくれることほど心強いことはないんです。

Q.僕が庭に興味を持ったひとつの理由として、庭のすべての配置を上から見た時に、一枚の絵として凄く美しいと感じたことがあるんです。例えば、重森三玲さんが造った東福寺の庭の上空写真は凄くグラフィカルで、宇宙観のようなものを立体的に表現したものが、平面的にも美しくなっているというのが面白かったんです。ものを作ることというのは、ある意味創造主になることに近くて、作ろうと思えば自分がイメージする世界を何でも作れてしまいますよね。だからこそ、そこに白銀比などの法則や秩序を入れていくという感覚が自分にはあるんですが、東福寺の庭にはそれに近いものを感じたんです。

小川:例えば、歴史ある石庭などの配置が黄金比や白銀比になっていたりするのは、後世の人が気づいた部分も多いんじゃないかと思うんですね。美しいとされているもののサンプルを集めていけば、自然とそれが法則に重なっていく場合もあり得ます。一方で重森さんは近代の方でもあり、多方面に造詣の深い方でしたから、そうした法則などを意識して造られた部分も少なからずあったんだと思います。現代に生きている私たちには、先人が培った経験や裏付けがあるので、人に何かを伝えようとするのであれば、ちゃんとした理由を何かしら持っているべきだと私は思うんです。だから、植治ではスタッフがしょっちゅうカルテのようなものを書かせていて、それらの蓄積をもとに、「今年の剪定は守り重視で、来年攻める剪定に転じるための力を蓄えよう」とか「何年かに一度の作業として、痛みを伴ってでも今後のために思いっきり行け!」というような戦略を立てていくんです。

Q. なるほど。それは面白いですね。

小川:だけど最終的には、それらを覆すような現場のハプニングというものが凄く大事だとも思っています。胡散臭い話に聞こえるかもしれませんが、最終的には石や木に聞いてみないとわからないところがあるんです。別に私にそういう力があるということではなく、こちらが何かを押し付けたらダメなんです。なぜなら、石や木の方が私たちより長生きですからね。我々は石や木を置いたり植えたりする時に、これらが時間をかけて地球そのものになってほしいと考えるんです。

どんな庭造りが理想ですか?

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