結婚したからって腐女子は満たされるわけじゃない
二村 そういえば岡田さんは最近ご結婚されて新婚生活を送っておられるわけで……、おめでとうございます。
岡田 ありがとうございます。
二村 腐女子のかたが全員、めんどくさい女性だというわけではないと思いますが、えーと、なんと言えばいいのかな、何を言っても問題発言になるような気もしますが……、ようするに「結婚した」という事実において、腐女子のかたの精神的こじらせって治癒したりするものなんですか?
岡田 いや、そんなことないです! 腐女子が彼氏を作ったり結婚したりすると、その過去が消えてなくなってしまうように扱われることが、私は納得いかないんですよ! 私が所属している「久谷女子」という同人サークルがあるんですけど、女子ばかりのメンバーで既婚率が9割ぐらいです。どの家庭も協力的で、盆と正月に姑の待つ実家へ帰省するその前に、好きなだけ夏冬のコミケを楽しむといいよっていう夫ばっかりで。
二村 理解ある旦那さんたちですね(笑)。幸せじゃないですか……。
岡田 たしかに幸せなんですけど、やっぱり我々は満たされていないんですよ。結婚してようが子供がいようが、リア充にはなれないんですよ。
二村 なぜですか? ていうか、どうしたら満たされるんですか!?(笑)
岡田 本当に、どうすればいいんでしょうね……。たとえば、「久谷女子」メンバーには女子校出身者が多くて、集まるとビールジョッキ片手に「失われた青春」の話とかしてますね。「夕暮れの河原で学生服のまま自転車に二人乗りとかしたかったなー、チクショー」とか。もうこういう失われた青春は、絶対に取り戻せないですから。
二村 取り戻し得ない青春に、楽しく明るくルサンチマンを抱きつづけることこそが、妄想力たくましい人間の「生きていくモチベーション」じゃないですか!
岡田 たぶん男性でいう「DT」みたいなことですよね? 結婚して童貞を喪失しても「DT力」は持ち続けている、というような。私たちの場合はその願望をあらわにしすぎてしまって、しかもそこに「腐」の要素があったりするので、男子にドン引きされるんですよ。【男でも女でも本質は同じ】という気もしますけどね。恋愛をこじらせているっていうよりは、自分自身に甘酸っぱい体験が欠落していたり、逆に豊富な黒歴史がありすぎたりするので、その穴をなんとか埋めようとしているわけです。でも、その穴は決して埋まることはない。だから多分、70歳、80歳になっても、ずっとこのままブラックホールみたいなものを抱きしめているんだろうなと思ってしまいます。
二村 そういう自分たちを、自分で「不幸」だと思います?
岡田 幸不幸とはあまり関係ないですね。いや、どうかな。でも他人から「幸薄そうだ」と思われるのは大変不本意なんですよ。「私は私の不幸を感じて敗北を抱きしめているけれども、それでも、あなたに不幸がられる筋合いはない!!」みたいな。