K-POPからみえるもの—もう一つのIFと新たなカ 第3回

日本におけるK-POPの受容やそのインパクトについて論じてきた本連載。最終回では、そこから先にある現在の音楽事情と広がりについてライターの久保内信行さんが論じます。(全3回)

K-POP受容から見る新しい「カッコよさ」

 第一回、第二回と、日本に上陸したK-POPがどう受け止められ、影響をあたえたかについて考察してきた。おおまかにまとめると、K-POPには日本人が感じるダサさと最先端の部分が共存しているということだった。そのダサさは、日本のヨナ抜きを代表する音楽教育が韓国にも同時期にもたらされ、演歌・歌謡曲の血脈が生まれた結果であるということ。

 また、最先端に聞こえる理由は、米軍基地が首都部にあり、80年代からやっと大衆歌謡がブレイクした歴史的経緯から、欧米の影響がそのまま楽曲に反映されていることだった。そして、ダサさと最先端という一見相容れない価値観の共存は、ポップカルチャーの欧米こそ本場でありそれに近いほど「カッコいい」という評価軸のいびつさが大きく関係していると指摘した。

 最終回である今回は、無意識での欧米の神格化を一旦相対化することこそ、日本のK-POP受容、そして自国のJ-POP、さらには非・欧米のポップミュージックを新たな視点で見直す契機になりうることを語って行きたい。

上陸したのはK-POPだけではない!? FUNKOTへの注目

 日本、韓国、そして無数の非・欧米の各国。当然のことながらそれぞれの国にはポップスシーンが存在し、ブータンの宇多田ヒカルや、バングラディッシュのマイケル・ジャクソンとも言えそうなアーティストが若者に愛好されている。しかし、これらは日本では一部の愛好家が国単位で楽しんでいて、マニアと研究者の趣味であり、「ワールドミュージック」だった。

 日本でも、ここ数年サブカルチャーシーンで注目されている非欧米の音楽がある。超高速なダンスミュージック、ファンコット(ファンキー・コタ)だ。90年代後半からオタク向けのサンプリングネタとテクノ、ガバをミックスしたナードコアを、グループ・レオパルドンで牽引した高野政所(まんどころ)が中心に、紹介された音楽だ。特徴はこちらも、てらいのない大ネタサンプリングネタ使いと、超高速かつざっくばらんなビートで、その快楽主義すぎるトラックが中毒性があるとして注目されている。


9nine 『イーアル ! キョンシー feat.好好!キョンシーガール』

 その高野政所が編曲を担当したアイドルグループ9nineの新曲『イーアル ! キョンシー feat.好好!キョンシーガール』 を見てもらうと、インドネシア発祥のダンスミュージックにもかかわらずキョンシーが群舞し、ファミコンサウンドのサンプリングが横溢、どこの国の音楽か説明がないとサッパリわからないがインパクトは十分だ。

 オーバーグラウンドではK-POP、サブカルチャーではファンコットと、「ワールドミュージック」の枠を超えて、バックグラウンドの理解を前提とせず、単純にポップミュージックとして消費される非欧米の音楽が注目される素地ができてきたのだ。

ダンスミュージックという容れ物

 この新しい音楽の潮流は、筆者にとっては大変喜ばしいことだ。しかし、日本が開かれたポップスへの理解を手に入れつつあるということを必ずしも意味しないとも考えている。韓国への理解が深まったからK-POPが身近になったという事実はない。むしろ、「今までK-POPのことが好きだったけれど、竹島問題を知って嫌いになった」と嫌いになるケースのほうが多いくらいだ。近年のK-POPへの支持は、むしろバックグラウンドへの無理解によってもたらされたと考えるほうが自然だ。

 インターネットの普及により、さまざまな音楽がすぐに聞けるようになり、良いものが話題になってピックアップされやすくなったなどという分かりやすい物語ともひとまず分けて考える必要がある。なぜなら、欧米を規範した「カッコいい」に代わる言葉をまだ日本のリスナーは持っているとは言いがたいという理由と、もう一つはインターネットは基本的に人々の選択肢を見かけ上広げたように見えるがその実、選択肢を狭める働きのほうが強いからである。

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