「隠れ家のような」という形容は、何もレストランの専売特許じゃありません。美術館にも、そうした雰囲気のところがあるのです。今回は、東京都心にありながら隠れ家っぽさを有する、原美術館の展示をお勧めしたく思います。
JR品川駅から歩くこと10分ほど。ビルが建ち並ぶ駅前から、徐々に住宅街へと入っていきます。こんな奥まったところに何かあるの? 少し不安になってくるころ、大きな庭と、タイル張りの白亜の建築が現れます。そこが原美術館です。
もとは個人の邸宅だったものを、現代美術を展示する場へと生まれ変わらせたのです。玄関、いえエントランスを潜ると、少し湾曲した板張りの長い廊下が続き、その右手に部屋が並びます。途中には重厚な階段もあり、2階へも上がっていけます。かつて食堂だったりベッドルームだったりした部屋が、いまはそれぞれ展示室になっています。
現在開催中なのは、「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」展。森村泰昌というアーティストの名、覚えていますか? 少し前にも目にしましたね。そうです、先日、資生堂ギャラリーでの展示をご紹介したのと同一人物。かのアーティスト、1994年に原美術館で個展を開いていました。彼にとって日本の美術館での初個展だったのですが、そのときに展示したのが「レンブラントの部屋」とのシリーズでした。展覧会終了後、同館のコレクションとなったシリーズ全作品を、再び全館を使って展示しようという試みなのです。
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