最近、翻訳にちょこっと携わっている『The Data Journalism Handbook』(公式サイト)を取り上げ、ようやく日本でも注目され出しているデータジャーナリズムの話をしようと思います。しかし、その前にインターネットとジャーナリズムの関わりの歴史をおさらいさせてください。
ネットとジャーナリズムとの兼ね合い、もっと言えばネットが実現するジャーナリズムという観点で最初に大きな議論となったのはおよそ10年前、情報発信を容易にしたパブリッシングプラットフォームとしてのブログの流行時までさかのぼります。
当時「ブログはジャーナリズムの新形態か?」「ブロガーはジャーナリスト足りえるか?」といった今から見ると暑苦しい議論がなされたわけですが、一部の例外を除いて大半のブログは独自の報道を行っていないし、ジャーナリズムを実践しているつもりもないわけです。ゆえに両者は別物だという『ウェブログ・ハンドブック』(毎日コミュニケーションズ)の著者レベッカ・ブラッドの冷静な見方が今読んでも妥当に思えます。
スコット・ローゼンバーグは『ブログ誕生』(NTT出版)の中で、当時のブロガーとジャーナリストの対立について、「一見正確性や客観性などが問題のように見えるが、その実、争われていたのは資格であり、権利であり、敬意であった」と述懐しています。ただそこに増長し、認められたいブロガーとそれに反発する既存ジャーナリストという構図にとどまらない論点があったのも確かで、それは結論ありきの一面的な報道、特に一方向的な報道に対するネットユーザの強い不満を反映していたのは間違いありません。