——声優になったきっかけを教えてください。
最初に声優になろうと考えたのは、高校生の時です。あまり主体的に決めたわけでもなかったんですけどね。当時から今に至るまでF1レースが好きでして、三年生になって進路を決めなければいけないときには、自動車整備の専門学校に行こうとまずは思いました。担任の先生にもそう報告していたんですけど、ふと思ったんです。『もうちょっとちゃんと考えてみよう、自分が1番興味あることって本当にそこだろうか』と。そのとき、アニメや声優のことが頭に浮かびました。アニメにとても詳しい同級生がいて、声優の仕事のことなんかまでいろいろ教えてくれて、すごく興味が湧いていたんです。声優さんがパーソナリティをしているラジオ番組を聴いたりもしていました。「そうだ、この道があった」という気持ちになり、声優養成の専門学校の資料を急いで取り寄せました。親に「この学校に行こうと思う」と伝えると、「ああ、テレビやん、ええよ。行き行き!」と言ってもらえました(笑)。理解のある親でよかった。
——声にとても自信があったから、というようなことではないのですね。
それはなかったですね。素朴な興味だけでした。アニメや声優の仕事の実態なんてよく分かっていなかったし、そもそもアニメ作品にそれほど詳しくなかったんです。学校に行くと決めてから、徐々に勉強していった感じです。学校を出てから上京したんですが 、そのときは舞台をやろうと劇団に入りました 。声優をあきらめたということではなくて、自分がやりたいのは結局お芝居なんだと気づいたからです。声優の仕事も、声のみを使った芝居であって、役を演じるという意味では同じです。それで現在まで、舞台に立ちながら声優の仕事もするという形を続けています。
——とはいえ、声優の仕事と舞台で演じるのでは、ずいぶん違う面があるのではないですか。
声というたったひとつの武器しか使えない声優のほうが、職人的なところはあるかもしれませんね。専門的な技術を要求される度合いが高いのは声優だと思います。舞台のほうが楽なんじゃないかと思うことも多いですよ。まあそれでも、役柄の人物像をいかに表現するか、そこに集中していくというのは舞台でも声の仕事でも同じですけどね。
——声優の仕事でいちばん難しいのは、どんなところなのでしょう。
やはり制約が大きいところでしょうか。人の感情を、音だけで表現しなければいけないので、やはり繊細に演じていかないとうまくいきません。ちょっとした息づかいだけでも、人はそこから感情を読み取ってしまうものですから、気を抜かずにやっていかないといけません。あとは、こちらが絵に合わせていくというルールがはっきりしているのも、演じるうえでは大きな制約になりますよね。セリフの長さ、ひとこと話すのにかけられる秒数も細かく決まってきますから、そこにピタリと言葉を被せていくという専門的な技術はどうしても必要です。
——声優としてやっていくにはまず、声のスペシャリストとしての技術を磨く必要があるのですか?
それはどうしても必要になりますね、最終的には映像と照らし合わせて、そこにうまく合っていなければいけませんから。でも、それだけでは絶対に足りない。単純にセリフの「尺」を合わせるのではなくて、その人物がどんな性格で何を考えているか、この場面ではどういうことを表そうとしているのか、ちゃんと把握していかないと、役を演じることにはなりません。キャラクターの造形や設定、その場面での表情、カット割りはアップなのか引いた絵なのか、いろいろなことを参考にしながら声の演技をつくり上げていきます。キャラクターや背景の絵があるということは、そこにヒントもたくさんある。うまく掬い上げて、お芝居に生かしていくんです。
——声優として、日ごろ心がけていることはありますか。のど飴を持ち歩いているとか、どんなときも大声を張り上げたりしないとか……。
健康第一、風邪を絶対にひかないようにしているのは確かですね。体調がおかしいなと少しでも感じたら、決して無理はしません。あと、言葉を使う職業なので、ふだんから言葉については意識していますよ。たとえば、「超ヤバい」みたいに「超」ってとてもよく使われていますよね。それはそれで時代を表す言葉なんでしょうけど、なんでも「超」で済ませていては、日本語が痩せていってしまう気もする。だから自分としては、そのときにふさわしい表現は他にないかなといつも考えるようにしています。これがぴったりだと思える言い回しは常に探しています。できるだけ言葉には敏感でいたいですね。
——こんな声優になりたい! という理想像はありますか。
少しでも近づきたい先輩はたくさんいます。ただ 、単に憧れているようでは、その人を決して超えられないことになってしまう気がして。だから、近づきたいという気持ちは心の奥にしまってあります。あらかじめ自分の中に理想の声優像というのは持っていませんね。役者は役をもらってこそ輝けるもの。どんな求めにも応じられる役者になりたいと思いますし 、「この役、やらせてみたいな」と期待されるような存在でありたいですね。
(宇宙兄弟インタビューはこれで最終回です)
取材・文/山内宏泰

内藤玲(ないとう・りょう)
俳優、声優。大阪府出身。主な出演作に『おじゃる丸』カタピー役、『デスノート』松田桃太役、『テニスの王子様』金色小春役などがある。
個人ブログ→http://blog.livedoor.jp/ryo0622ryo/
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