天才のつくり方

第6回】有限なものを奪い合うか、新しいものを生み出すか。

アメリカがイノベーションの国だとしたら、さて日本は?  有限なものを奪い合うのではなく、パイを増やす思考に切り替えるには、どうすればいいのか。嫉妬の感情が生まれる条件についての考察から、これからの教育の未来が見えてくる。

嫉妬は、リソースが有限な場合に生まれる感情。

北川 アメリカがイノベーションの国だとしたら、日本は何の国だと思いますか、茂木さん。

茂木 え、なんだろう。

北川 日本は情緒の国なんです。街を歩いていて、積み重ねた歴史から生まれる情緒を感じることがよくあります。日本は「新しくて興奮する何か」よりも「人との調和や粋の精神」を重要視していると思うんです。だからこそ、そこにはアメリカには生み出せない素晴らしい何かがあると、僕は信じています。特に僕が興味深いと感じるのは、「嫉妬」の感情ですね。

茂木 おもしろいこと言うねえ。どうして? 日本で、嫉妬を感じてるの?

北川 たまにあります。嫉妬というのは感情の中でも最も強い要素だといわれてるだけに、目立ちますよね。情緒の国である日本ではより、人間関係の重要さを感じます。イノベーションの重要性や正論で押し切ろうとすると、うまくいかないことも多いですし。はるか昔の平安時代に、「源氏物語」という嫉妬が渦巻く複雑な物語が生まれたことからもわかるように、日本は情を中心に回っている国なんだなあと思います。

 茂木さんは、他人から嫉妬されてるのを、感じたことがないんですか?

茂木 おれ、そういうことにすごくうとくてさ、意外とぼーっと生きてるんだよ。

北川 (笑)

茂木 でも、嫉妬ってたしかにすごく大事なファクターなんだよね。反対に、北川くんが嫉妬することはあるの?

北川 ありますね。

茂木 どういう対象に?

北川 自分が同じ土俵に立ってると思う存在に、ですかね。だから、土俵が違うなって思ったら嫉妬も何も感じないです。

茂木 ふむ。おれ、一時期、嫉妬について研究したことがあるんだけど、嫉妬というのは結局、有限のリソースをめぐる争いなんだよ。

北川 ああ、そうか!

茂木 例えばね、北川とおれが1人の女の子のことを好きになったとする。そして、彼女の気が北川に向いたらおれは嫉妬をする。なぜかというと、その子の時間や注意、愛情っていうのは有限だからね。

北川 うーむ、なるほど。

茂木 だから、abundant(ありあまるほど豊富)なものには、嫉妬が生まれない。意外とお金ってabundantだから、嫉妬の対象になりにくいんだよね。だって、おれが10万円持っているからって、北川が10万円持てないってことはないでしょう。

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天才のつくり方

茂木健一郎 /北川拓也

日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。 ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む

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