メルマガビジネスの現在、未来

ネット事情に詳しい編集者・ライターの加野瀬未友さんに、ニワンゴの「ブロマガ」開始などで盛り上がるメルマガについて書いていただきました。メルマガが日本のwebサービスの中でどのように盛り上がってきたのか、それがどのように議論されてきたのか、そして今後どのようになるのか。メルマガの現在過去未来を見渡した内容になっています。ぜひご一読を。

有料メルマガの歴史は長い

 ネットで有名な人たちが次々と有料メルマガを始めたり、 8月21日にニコニコ動画が「ブログ・メルマガ」略して「ブロマガ」なるサービスを開始したりと、有料メールマガジン(以下有料メルマガ)が盛り上がっている。有名なメルマガサービスといえば『まぐまぐ』だが、その『まぐまぐ』が有料メールマガジンシステム『まぐまぐ! プレミアム』を始めたのは2001年8月だから、既に10年以上の歴史がある。そんな歴史の長いビジネスモデルだが、なぜ今になって注目を集めているのか?

 有料メルマガが脚光を浴びたのは、ネット上でテキストコンテンツに課金をしようとする数々の試みが失敗してきた中、現状一番成功しているのが有料メルマガだからだ。ネット上のコンテンツ課金の試みとして、特に何回も繰り返されてきたのが「Web投げ銭」システムだった。ネットで公開されているテキストを読んで面白いと思ったら、作者に投げ銭をする。そのためのシステムとしてNIFTYが運営する「@pay」(2007年9月終了)や、Web Moneyが運営する「ぷちカンパ」(2012年3月終了)、はてなが運営するはてなポイントなどがあったが、このシステムは残念ながら定着していない。仮に定着したとしても、要は「カンパ」であり、人の善意に頼ったシステムは、ビジネスにはならない。

 コンテンツをダウンロードして課金するモデルは、ソフトウェアではある程度成功しているが、テキストではこれといった成功モデルはなかった。そんな状況を打破するものとして、電子書籍が期待されていたが、iPadが登場した2010年は電子書籍元年と華々しく話題になったものの、単体で成立する現実的なビジネスになっているかと考えると厳しいのが現状である。

 そこで電子書籍のかわりに浮上してきたのが、有料メルマガであった。有料メルマガの利点は単発で売りきるものではなく、サブスクリプションモデル(月額課金)であることだ。ジャーナリスト・メディアアクティビストの津田大介氏によれば、iOSアプリの定額課金では、毎月の契約更新の時に確認のダイアログが表示され、継続率が下がってしまうが、i-modeやメルマガだと自動更新されるため、マネタイズの面で有利だと語っている。

津田大介2011年を振り返る 「メルマガ」 | ダ・ヴィンチ電子ナビ

 昔の有料メルマガといえば、株やFX、競馬、パチンコの必勝法や、ナンパなど「金」「女」といったわかりやすい欲望と密接に繋がったものばかりであり、情報商材に近いジャンルだった。ランキング上位にいるメルマガの作者は、書籍などで他のメディアで見かける訳ではない、「メルマガ界だけの有名人」という世界だ。数年前のメルマガ界の雰囲気について、『週刊isologue』という有料メルマガを2009年4月から始めている磯崎哲也氏のブログ記事が参考になる。

伊藤直也さんのメルマガについてのコメントに関連して | isologue

 そういったメルマガ業界の空気を変えたのが、ホリエモンこと堀江貴文氏のメルマガ『堀江貴文のブログでは言えない話』(2010年2月スタート)だ。まぐまぐのインタビューによれば、堀江氏が有料メルマガに目をつけたのは、自分の読んでいるブログの作者がそろって有料メルマガを始めたからと語っている。津田大介氏によれば、堀江氏のメルマガは日垣隆氏による影響が大きいそうで、月に840円という価格も、日垣隆氏のメルマガが年間1万円であるところから、設定されたという。

まぐスペインタビュー 堀江貴文さん - まぐまぐ!

あけましておめでとうございます!電子書籍の本命はやっぱりメルマガだよ。|堀江貴文オフィシャルブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」

メルマガだって編集者がいる

 メルマガというと、個人で全部文章を書いて発行するというイメージがあるかも知れない。しかし、明言している人こそ少ないが、人気メルマガの多くは編集者が入っている。そして、編集者の関与のスタイルはメルマガによって違う。堀江氏のメルマガの場合、堀江氏の発言や文章がメインであり、編集者はQ&Aコーナーなど堀江氏の発言をより魅力的に見せるための裏方として活動している。対して、津田氏のメルマガ『メディアの現場』は、コンテンツすべてが津田氏の発言や文章という訳ではなく、津田氏によるインタビューや、津田氏以外の人による書評やメルマガレビューなどが入っていて、なかにはスタッフによる対談もある。『メディアの現場』は津田氏のフィルターを通した情報が載っているというのがコンセプトであり、津田氏が編集長の雑誌といえる。

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