望まぬお受験の果てに進学した先で、じつに12年間もの長きを女子校で過ごす羽目になった私。男の子のいない学校に通うなんてイヤだ、と泣いた幼女の日々は遠く去り、『うる星やつら』の藤波竜之介よろしく女心にサラシを巻いて、求められるまま「男役らしさ」を磨き上げながら、学園生活をサヴァイヴしていた。そうして周囲に「ヅカっぽい」と褒められるたび、宝塚歌劇団への嫌悪感は増すばかりだった。
ところが、である。晴れて共学の大学へ進学し、誰に禁じられることなく自由にスカートを穿き、ごくごく「普通に」男女混合の社会生活を営むようになり、女子校で過ごした十数年間の先に、一般社会で暮らした十数年間がプラスされてみると。あるときから、私は憑き物が落ちたように、宝塚歌劇へ対する苦手意識を払拭することができた。正確には、相変わらずある種の抵抗感はあるのだが、それでも最近は『宝塚ドリーミングシアター』を録画したりキャトルレーヴへ足を運んだり宝塚アンで通販したり、着実に在家信者への道を歩みつつある。
いったい何が私を変えたのか。轟悠様である。
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