第五回】「呉越同舟」か「マリアージュ」か? 広告とコンテンツの切ない関係 
〜ターゲティング広告が開いたパンドラの箱〜

cakesを読んでいるインターネット好きのみなさん、お待たせしました! 今回のテーマは、「ネット広告」。ネットを使っている人ならば、誰しも知らず知らずに目にしているはずですが、実はとある規則性が存在することをご存じですか?

「ネット上で不動産広告が増えた」と感じるワケ

さて、前回は媒体資料と、そこから垣間見える広告営業の裏事情というものについて書きました。しかしながら、ある意味では前回のコラムで書いた、内幕を面白可笑しく描写したような営業スタイル、媒体資料を持参して広告主に対面し口八丁手八丁な熱弁を振るうことは、21世紀における広告営業という視野では、段々と「オールドスタイル」なものになっていくのかもしれない、と筆者は考えています。今日はそのことについて考えたいと思います。

「最近、ネットに出ている広告って、やたらと不動産広告ばっかりなんだね〜!」
と、ある不動産屋の方(あまりネットリテラシーは高くない)がポツリと漏らしたそうです。(確か、Twitterで「ちきりん」さんが、この発言を紹介していて、私は知りました。)

この発言、ニヤリと出来る人はネット広告業界の人だと思います。

この発言の「面白さ」が分かるためには、ターゲティング広告というものについて理解が必要なので、少し解説をしたいと思います。ターゲティング広告の基本的な仕組みを理解することは、これからのデジタルメディアのあり方を理解するうえで非常に重要な基礎知識ですから、広告関係者でなくとも是非お読み頂きたいです。

これまでテレビや新聞・雑誌といったアナログ媒体での広告は、それが掲載されたメディアの全ての閲覧者に、必然的に見られる/見えてしまうものでありました。しかし、広告の費用対効果を追求するうえで、ここに大きな問題が存在するのです。例えば、男性である私が、生理用ナプキンのテレビCMを何万回も見たとしても、私が生理用ナプキンを購買することは絶対にありえません。なので、ユニ・チャームやP&Gのような広告主の立場にしてみれば、男性に生理用ナプキンのCMを見せるために使われた広告費は「ムダ」以外の何者でも有り得ません。

しかし、そもそもアナログ媒体上での広告では、全体に広告を出すか出さないか、オールオアナッシングでの掲載判断しか出来ないために、かなりの程度まで、媒体費のムダは必要悪的に許容せざるを得ませんでした。

こういった状況を指して、米国のデパート経営者であり近代広告の父と言われるジョン・ワナメーカーは以下の有名なセリフを吐いたのです。

広告費の半分が金の無駄使いに終わっている事はわかっている。
分からないのはどっちの半分が無駄なのかだ。

しかし、インターネットメディアの普及とそれに伴う広告のターゲティング化は、上記で言われた「どっちの半分が無駄なのか?」という広告業界の発生以来の大問題に、いよいよ回答を出してしまうのかもしれません。

冒頭の例に即して言いましょう。不動産物件の検索サイトに最近アクセスしたことがある人、不動産関連の検索ワードを検索エンジンに放り込んだ人などが「不動産に興味がある人」と定義されます。そして、そういう人たちには、不動産以外のクルマやビールのバナー広告を見せずに、広告掲載をするサーバー側でバナーの内容を差し替え、不動産関連のバナーばかりをサイトを跨いで継続して出し続けるのが、昨今のネット広告で一般的になっています。

不動産は、購買単価が高いのに具体的に興味を持っている人の比率が少ない領域なので、不動産に興味がある人には、他のあらゆる広告を差し置いて不動産の広告を見せ続けることが、広告主のニーズに応え広告売上を最大化するうえでも有効なのです。

そして、不動産屋さんならば、おそらく不動産サイトを見ることが非常に多いのはないでしょうか。そういうウェブの閲覧行動スタイルは「この人は不動産に興味あり」と判別されるわけで、結果的に、四六時中不動産の広告ばかりがその人のウェブブラウザに掲載され続けるのです。これは、ネット広告業界人には「当たり前」なのですが、世の中ではまだまだそういう理解は一般的ではないかもしれません。

そこで、冒頭に紹介したように、全ての人が自分と同じ広告を見ていると思い込み、「最近のネット広告は不動産ばかりなんだね」と勘違いをしているところがこの話のキモだったわけです。(正しくは、「貴方に向けて出される広告が、不動産ばかり」という状況なわけです)

ハラミ好きの美食家には、もうミンチを売らなくてもいい

当たり前ですが、マンション・デベロッパーは、現在マンション購入を検討していない人(=大部分の一般生活者)とコミュニケーションを取ることには余り興味がありません。また、求人サービス運営企業にとっては、転職するつもりのない人(=こちらも大部分の一般生活者)に自社の広告がリーチしても仕方がありません。しかしながら、バナー広告がターゲティング化される以前は、マンション・デベロッパーや求人企業も、ムダを承知で多額の広告バナー出稿をするのが一般的でした。しかしこのことが、実は広告の買い手目線では非常に不自然で、売り手の都合優先なことだったのです。

このことを焼肉に例えて説明してみましょう。

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