最終回】「味方」ではなく「道を探す人」でありたい

牧村朝子さんによる人生相談「ハッピーエンドに殺されない」は、cakesサービス終了に伴い、cakes上での掲載は今回が最後となります。約10年間、ご愛読いただきありがとうございました。最終回となる今回は、牧村さんがいま考えていることや、今後についてお伝えしていきます。


バナー写真撮影:田中舞 スタイリング:宮寺理美 ヘアメイク:世界のホリエ

「誰かに一緒に怒ってほしい」と思ったことが、おありでしょうか。

今回がcakesでの最後の更新になります。
2014年、26歳の時から人生相談を連載しています、文筆家の牧村朝子です。

おかげさまで今年、2022年夏、cakesサービス終了まで連載を続けることができています。わたしは35歳になりました。だいたいで言わせていただけば10年の時が過ぎました。

10年って、10年です。人生相談を読む人も書く人も人生が進んでいます。赤ちゃんを抱いた読者さんから、「牧村さんの本、中学の時に読んでました!」って言っていただく、なんてことが起こるくらいの長い時間です。

この連載も、歴代三人の担当編集の方々にお世話になりました。ありがとうございます。

また、2017年には青弓社から2021年には双葉社から、書き下ろし付きで書籍化させていただくこともかないました。

記事総数326本。
総相談件数は未掲載のもの含め672件。
すべて拝読しております。読んでくださった方、SNSなどでご紹介くださった方、本当にありがとうございます。おかげさまのことです。

cakesは2022年8月31日をもって公開終了となりますが、この連載の記事データは、noteに移行を進めています。

2〜3ヶ月ほどお時間をいただいて、過去記事の公開方法や、今後の人生相談についてお知らせをしたいと思います。お知らせは牧村朝子のnoteと、Twitter、それから、音声配信のRadiotalkにて申し上げたいと思います。

少しお時間をいただきたい理由について申し上げます。

それは、なんと言いますか、「正しく怒ろう正義団」を形成してしまわないためです。

人類はチーム戦で生きてきた生物種です。昔から、「誰かと一緒に怒ることで、自分に味方してくれる人たちが誰なのかということと、自分の正しさとを確認したい」というような、「正義チーム結成欲求」みたいなものを抱えて生きてきているのではないかと思っています。

あなたにもきっと、言われた経験があると思うのです。

「どっちの味方なの?」って。
「友達なのに/家族なのに/恋人なのに/同じ○○なのに、なんで味方してくれないの?」って。
「味方してあげたんだから、味方してくれるよね?」という、肯定の物々交換を持ちかけられたことがある人もいるかもしれません。

わたしにはこれがどうしてもできないのです。

代理戦闘員みたいな人生相談をしたくない。
「こんなひどいやつのせいで、こんなふうになった自分なのですが」という相談を受けて、お金をもらって、「そいつひどいですね。やっつけましょう。わたしはあなたの味方ですよ!」と戦闘チームに入るようなことをしたくない。

お金で味方する思想の戦闘員ではなく、一人の文筆家でありたいと思います。「わたしたち」にならず、ただ「わたし」として「あなた」に語りかける姿勢でありたいと思います。個人の人生に起こる出来事が、一体何を背景に、何の続きに起こっていることなのかを、歴史資料や社会制度から洗い出して、文脈につなげる人でありたいと思います。

長々と調べ物をするよりも、「これひどい!」とSNSに投稿して、共感してもらったほうが楽なんだと思います。手間としても、気持ちとしても。しかしそうした不気味に便利な共感システムが構築されていくにつれ、道を探すより味方を探すようになり、どこにも行けないまま閉じ込められてしまうということが起こりうると思うのです。遠くに敵たちを睨みつけて、「共感し合える私たち、みんなと違って真実を知っている私たち」として。

本質的に人と手軽に便利につながるための道具であるスマホ越しには、もしかしてもう無理なのかもしれないと思います。SNSアプリを全削除し、誰ともつるまず、だからこそ誰とでも、「身内」と「外」を分けない考え方で、どこにも属さずに旅をしながら書籍原稿を書いていく、そういう生き方が自分には一番合っているのかもしれないです。もう、オンラインではなくて、書籍を中心に執筆活動をしていく方向に転換するかもしれません。

というわけで、人生相談を書く場が変わります。cakesではなくなる、というだけではなくて、オンラインではなくなる、のかもしれないです。過去記事をnoteで閲覧していただけるようにするつもりだということは変わりません。

味方を探して居場所に留まるのも生き方だと思います。しかしわたしは、味方ではなく道を探す人でありたい。動き続けていたい。自分の生きる今が、誰かの生きた過去の続きであることを感じて、誰かの生きていく未来につなげていきたい。過去の命と、未来の命と、直接関わり合うことができないにしても、ちゃんとつながっていることを静かに感じていたい。

それが、今のところの到達点です。

ありがとうございました。あなたが、あなたの手で、あなたの続きを書いていくことを、遠くから想像しています。


【お知らせ】
牧村朝子さんによる人生相談「ハッピーエンドに殺されない」は今回で最終回です。ご愛読いただきありがとうございました。これまでのcakes連載は牧村さんのnoteで再掲される予定です。最新情報は牧村さんのnoteTwitterRadiotalkにてご確認ください。


【この連載が書籍化になりました

ふつうにふつうのふりしたあとで、「普通」をめぐる35の対話

cakesに掲載された35本を大幅に加筆修正し、また書籍でしか読めない書き下ろし2万字と、特選ブックガイドも収録。時代を象徴する悩みを一緒に考えていく、今よりもっと自由に生きるための現代サバイブ本です。

ハッピーエンドに殺されない

2017年までに掲載されたcakes人気記事上位を厳選して大幅に加筆・修正、書き下ろし17,000字を増補。結婚というおとぎ話のハッピーエンドを打ち破り、性にとらわれず「私を生きる」メッセージに満ちたエッセー集。

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この連載について

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

energy_arise ”「わたしたち」にならず、ただ「わたし」として「あなた」に語りかける姿勢でありたい” このスタイル素敵だなあ。 9日前 replyretweetfavorite

nishiuino https://t.co/98gARHdzkV これからどうやって生きていくか悩んでいた時期にたくさんヒントをもらいました、10年間ありがとうございました。 cakesの記事は全部読ませていただいてました。 12日前 replyretweetfavorite