ひとりの子どもを育てるには、村じゅうみんなの力が必要

cakesサービス終了に伴い、アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんの連載「アメリカはいつも夢見ている」は今回で最後の更新となります。約7年間、ご愛読いただきありがとうございました。最終回は、今年の4月に誕生したお孫さんにまつわるお話です。娘さん夫婦の子育てをサポートすることになった渡辺さん。子育てに関わるときのマインドについて考えます。

「アメリカはいつも夢見ている」と「まさかの自宅ウエディング」に何度か登場したわが娘アリソンが今年の4月に女児を出産し、私たち夫婦はめでたくおじいちゃん、おばあちゃんになった。

私たちはずいぶん前に娘夫婦から「どう呼ばれたいのか?」と尋ねられた。英語圏では通常「グランパ(Grandpa)」「グランマ(Grandma)」である。だが、娘婿のベンの両親と私たちの両方の呼び方が同じだと孫が混乱する。そこで、それぞれに呼ばれたい名前を提案して家族内での「固有名詞」にしようというものだった。

いつまでも若いつもりでいる(?)夫は「グランパとは呼ばれたくない!」という強い拒否反応を持っていたので、そう呼ばれたいベンのお父さんがめでたく「グランパ」の呼称をゲットした。韓国で生まれたベンのお母さんは韓国語の「おばあちゃん」である「ハルモニ(할머니)」を選んだ。

さて問題は私たち夫婦だ。「英語以外がいい」と強く希望する夫のために最初は赤ちゃんが発音しやすくて年寄りくさくない「ジッジ」「バッバ」という名前に決めて2人とも満足していた。ところが義母が夫に「ジージー(GG, Gigi)は曾祖母(Great Grandmother)の愛称よ。あなたは曾祖母じゃないでしょ」と重要な指摘をしてきたのでこの案が台無しになった。あまりにも悩みすぎてどうでもよくなってしまい、最初は「なんか年寄くさくていやだな~」と思っていた「じーちゃん」「ばーちゃん」を使うことで落ち着いた。日本で育っていない夫には「じーちゃん」という言葉への先入観がないので、けっこうハッピーに使っている(私はまだ慣れていない)。

仕事と子育て、どちらも諦めてほしくない

この呼び分けが重要なのは、2組の祖父母が定期的に子育てに加わるからだ。

救急医で研修医3年目の娘は、時には週1日12時間(実際には13時間)で週6日というシフトもある激務をこなさなければならない。また、植物学者の娘婿は車で片道1時間はかかる大学の研究・教育施設に就職したばかりだ。日本の保育園に匹敵するデイケアに預ける必要があるのだが、新型コロナのパンデミックのさなかにはデイケアはほぼすべて閉鎖していて予約を入れることもできなかった。孫が誕生した頃にようやくいくつかのデイケアが受け入れを始めたが、パンデミック前から待っている人が多すぎて娘夫婦の順番がまわってくる様子はない。たとえ入園できても、ボストンでは乳幼児の場合のコストは年間300万円近くかかるという。研修医の安月給からメディカルスクールの学費ローンを払い続けている娘にとっては痛い出費だ。

その話を聞き、娘が誕生してから10年ほど出張ばかりで子育てにほとんど関わらなかった夫が「娘の時に子育てを経験しそこなったから、孫の時には関わりたい」と言い出した。私も手伝いたいと思った。

私が娘を出産したのは東京にいた頃で、私の家族も夫の家族も近くにはいなかった。夫は娘の誕生直後にオーストラリア支社の面倒を見るために3週間出張、2日ほど戻ってすぐにアメリカ本社に出張、というスケジュールでほとんど自宅にいなかった。異動で香港に移ってからも同様であり、ひとりきりで子育てをした孤独さや辛さは今でも忘れられない。辛い体験をしてきた人が「私だって我慢したのだから、あなたも文句を言わずにやりなさい」と言いたくなる気持ちはわかる。だが、私は娘に自分と同じような孤独や絶望感を抱いてほしくはない。仕事と子育てを完璧に両立させることは不可能だけれど、どちらも諦めてほしくないと思った。だからデイケアの代行を提案した。

子育てに関わると決めた時に全員に提案したこと

とはいえ、私も仕事があるし、夫は出張も多い。毎日孫の面倒を見るとなると、自分の仕事や毎日のエクササイズをするために睡眠時間を削ることになる。体力的にそれは無理だ。幸いに娘婿の両親も私たちと同じような考えであり、それぞれの祖父母が週に2日ずつで合計4日孫の世話をし、残りの1日はフルタイムの子守を雇っている人のナニーを借りる「ナニーシェア」を利用するということになった。

孫の子育てに関わると決めた時に私が全員に提案したのは次のことだった。

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この連載について

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アメリカはいつも夢見ている

渡辺由佳里

「アメリカンドリーム」という言葉、最近聞かなくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。本連載では、アメリカ在住で幅広い分野で活動されている渡辺由佳里さんが、そんなアメリカンドリームが現在どんなかたちで実現しているのか、を始めとした...もっと読む

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コメント

10ricedar 各話題がサクッと終わってよい(上から〜〜) 読めなくなるの寂しい 5日前 replyretweetfavorite

emiady お孫さんを週2日みている。 助産師だったのに、授乳について何も言わないでいられる。尊敬するなあ。 15日前 replyretweetfavorite

ikb 『元大統領夫人のヒラリー・ロダム・クリントンが書いた「It Takes a Village」(2017年刊)という絵本がある。』 16日前 replyretweetfavorite

loveandpearl 先日、単行本を購入しました。 長い期間の配信大変お疲れ様でした。 |渡辺由佳里 @YukariWatanabe |アメリカはいつも夢見ている https://t.co/PNvBmftBY0 17日前 replyretweetfavorite