もう一度「織田裕二×世界陸上」を受け止める

7月16日に開幕する、世界陸上オレゴン大会。1997年以来、織田裕二と中井美穂が中継のメインキャスターを務めてきましたが、このコンビでの放送は今大会が最後になることが発表されています。最後の織田裕二をどのように受け止めればいいのか、「織田裕二×世界陸上」を考えます。

備蓄してきた熱量を発散しようとする

ある程度の期間を空けて織田裕二を見ると「変わらない」と感じる。どう「変わらない」かといえば、真っ先に立ち上がる変わらなさとは、「カッコイイ!」ではなく、「相変わらず、備蓄してきた熱量を発散しようとしている!」にある。これからドラマが始まります、映画の撮影が待っています、待ちに待った世界陸上です、これらの宣言を繰り返しながらいつもの織田裕二がやってくる。画面の中の熱量と画面の外の熱量にはとてつもない温度差があり、だからこそ、画面の外では、受け止めきれなかった彼の思いをコミカルに変換してしまう。それが本人にとって本望ではないとわかっているのだが、こちらはこちらで、それしかできないんですよ、という感覚でいる。

あの松岡修造でさえ

テレビとスポーツの関係は、この1年間で大きく変わった。いくつもの疑惑や無駄遣いが明らかとなり、ただでさえ歓迎されていたといえなかった状態に新型コロナが加わった東京五輪。引き続きコロナ対応が求められ、開催国・中国の人権問題やIOCの拝金主義が改めて明らかになった北京五輪。この2つの大会を、テレビ局は極力いつも通りに伝えようとしたものの、さすがに能天気には伝えられず、「私たちだって、それなりに葛藤を抱えながらこれを放映しているんです」という配慮が随所に挟み込まれていた。

その葛藤の大半は、結局、いつも通りの感動物語に集約されていったが、「とにかく楽しくやりましょうよ」からはさすがに一定の距離をとっていた。あの松岡修造でさえ、雲ひとつない晴天という表情ではなかったのだ。さすがの僕にも曇りがある、といった表情をしていた。実際、開催前後のインタビューでも、彼は、迷いのあるコメントを重ねていた。

1997年以来続いてきたコンビが遂に
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べつに怒ってない

武田 砂鉄
筑摩書房
2022-07-19

この連載について

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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