樋口一葉「苦をのがるるが為に(中略)此の操をいかにして破らんや」

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど現代人と変わらない不平不満です。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の近刊『人間愚痴大全』より特別公開します。(提供元:小学館集英社プロダクション)

20代、お金にまつわる愚痴

樋口一葉(小説家)

1872年-1896年。明治時代の小説家。本名、なつ(夏子)。半井桃水に師事し、文芸雑誌『都の花』『文学界』などに寄稿。『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などの傑作を残した。10年近く書き続けた日記の評判も高い。

金銭を侮蔑しふりまわされた小説家

小説家樋口一葉は、裕福な士族の生まれである。金銭的には恵まれた少女時代を生きてきた。ただし、樋口家は先祖代々の士族の家系ではない。父の則義が苦労して蓄財し、士族の株を得たにすぎない。

そんな恵まれた暮らしの中で生きてきたからこその反動だろうか、彼女は、金銭、蓄財を侮蔑し、士族として誇りを持って生きることを願ったという。

ところが、15歳の年に兄が病没。その翌々年には父が事業で失敗し、失意の中、命を落とした。これにより、樋口家は一挙に没落してしまう。

父が亡くなる時、一葉には、婿養子となることが決まっていた婚約者がいた。しかし、その男は、樋口家の没落を目にするや、一方的に婚約を破棄した。

婚約者にも捨てられた一葉は、母と妹を連れて借家に住み、洗濯や針仕事などをして糊口をしのいだ。かつては何不自由なく暮らしていたお嬢さまが、あれほど蔑んでいた金儲けを、生きていくためにせざるをえなくなったのである。

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なぜか、勇気が出てくる。不平不満の150篇。

人間愚痴大全

福田 智弘
小学館集英社プロダクション
2021-10-21

この連載について

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なぜか勇気が出てくる 人間愚痴大全

福田智弘

「今日も飯はうまくない」「アルコールでごまかすより外なかった」 天才と呼ばれる作家に芸術家、世界を変えた政治家に勇猛な武将まで、歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉に...もっと読む

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