続いて亮潤が指名したのは満を侍して登場の大悪党「カリパクジャン」。
さて、聞かせてもらおう、貴様の悪事の数々を! 全く興味はないがな。
「それでは、読み上げます。コホン」
と、礼のあとに余計な枕詞と、無駄な咳ばらいをしてからジャンは始めた。
「えー、将棋のゲームソフト、竹中隆、6千円ぐらい、えーどうしても返したくなかったため、借りていることをとぼけてしまった。あっ、そんな私の心の弱さ」
てめえか、こらっ!!! 竹中隆。それはつまり、おれのことなのだ。
小学3年生の頃、クラスで将棋が流行っていた。おれも例にもれずハマっていた。いや、おれは周りの誰よりもハマっていた。だからおれはあの時、なけなしの小遣いで格闘ゲームやRPGより、将棋のゲームを買うことを優先した。当時将棋のソフトを持っている人間はめずらしかったから、次から次に貸し出しの希望者がおれのもとを訪れた。その中の一人に山田もいたのである。
ソフトが色々な人の手に渡るなか、あろうことかある時、将棋のソフトは行方不明になってしまった。まったく、今考えると、とんでもない話なのだが、おれが小学生の頃はそんなことがたまにあったのだ。
まさか、あの迷宮入り事件の犯人が、こんな間近にいたとは。山田からは3万6千円(懺悔の門への参加費 + ゲームソフト代)いや、慰謝料も含めて、5万円を請求せねばならない。
それにしても最後にとってつけたように言った「わたしの心の弱さ」とはなんだ。あいつはそんなことを絶対書いていない。ボンネの懺悔を聞いて、急遽言い回しをパクったのである。 恐ろしき『カリパクジャン』。
その後も『カリパクジャン』は自分の犯罪をつらつらと読み上げていく。
文庫本、漫画、雑誌、参考書、写真集、CD、寝巻き、掃除機、デジカメ、ワープロ、靴下、空気入れ、ネクタイ、喪服、マウス、靴、ウォークマン、やかん、アイロン、アイロン台、ボイスレコーダー、軍手、はさみ、タイガーアイのブレスレット、イヤホン、リュック、ギター、アンプ、譜面台、上履き、とまあ出るわ出るわ。よくもそんなにパクり倒せたものである。
いい加減『カリパクジャン』の懺悔にも飽きてきた頃、やつの口からさらなる恐ろしい言葉が飛び出した。
「えー3万円、竹中隆、3万円、お金がなく甘えてしまった、私の心の弱さ」
おれは思わず立ち上がる。
亮潤様以下、懺悔を聞いていた皆の視線がおれに集中する。