ウィル・スミスのビンタ報道を考える

今回は、アカデミー賞授賞式でウィル・スミスが起こしたビンタ事件について考えます。どうしても「どちらが悪いのか?」ばかりが取り上げられてしまう日本のメディア。この事件があぶり出した問題について考えます。

「悪いのはどっち?」が立ち上がる謎

アカデミー賞のステージで、コメディアンのクリス・ロックが、脱毛症のため髪を短くしているジェイダ・ピンケット・スミスに対し、「『G.I.ジョー』の続編を楽しみにしているよ」と述べたことを受け、夫のウィル・スミスがステージに向かっていき、クリス・ロックに強烈なビンタを食らわせた。振り返って自席に戻るウィル・スミスは、肩で風を切るように歩き、自席に戻ってからも、汚い言葉を重ねていた。

とても不思議なのは、「悪いのはどっち?」というお題がたちまち立ち上がったこと。「暴力はいけない」vs「でも、言葉の暴力もいけない」、さて、あなたはどちらですか、と向けられる。案の定、日本のワイドショー番組では、この「どっち?」が繰り返されていたが、どっちも悪い。そう言うと「悪いのはどっち?」ではなく、「では、どちらのほうが悪いと思うか?」という問いに移行させられるのだが、なぜ、どちらかにしたがるのだろう。

反省も自分で操縦できる特権性

もうひとつ、事後反応として繰り返されたのが、日本では「奥さんを守ろうとしたウィル・スミス」を擁護する声が多いが、アメリカでは「暴力をふるったウィル・スミス」に厳しい声が向けられている、という比較。アカデミー賞という世界中の人々が注目している舞台での暴力行為を、日米で比較し、日本では擁護する声も、という意見にまとめあげてしまうあたり、それこそ日本的である。

この続きは有料会員の方のみ
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

この連載について

初回を読む
ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Nagare_145 https://t.co/eJUtxpoeiy どっちが悪いのか?ばかり取り沙汰されてその結論を出そうという新たな暴力 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

maru3321 「どっちが悪いと思うか?」とか「どっちの見方?」みたいな選択の迫り方、よくあるよなー。ほんと謎。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite