足利尊氏「この世は夢のようだ。(中略)早くこの世を逃れたい」

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど現代人と変わらない不平不満です。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の近刊『人間愚痴大全』より特別公開します。(提供元:小学館集英社プロダクション)

30代、不遇・人生にまつわる愚痴

足利尊氏(将軍)

1305年-1358年。室町幕府初代将軍(1338年-1358年)源氏の名門、足利家の嫡流。後醍醐天皇に従い鎌倉幕府を滅ぼしたが、のちに反旗を翻す。後醍醐天皇の南朝に対抗し北朝を立て、自らは征夷大将軍となり室町幕府を開いた。

功績を上げながらもネガティブな言葉がずらり

たとえ歴史が苦手という人でも、「足利尊氏」という名前を聞いたことがない、という人はまずいないだろう。室町幕府をつくった初代将軍である。

足利尊氏は、元は鎌倉幕府の有力御家人だったが、のちに後醍醐天皇による倒幕運動に参加。鎌倉幕府の滅亡に功績を挙げた。その後、後醍醐天皇の政権の評判が悪くなると、後醍醐天皇を追いやり別の天皇を立て、自ら室町幕府の将軍となった、という人物である。

家柄もよく、武芸にもすぐれ、歴史的な功績を数々残した名将であるから、さぞや自信たっぷりの人間なのかと思いきや、彼が31歳の時に、清水寺に奉納した願文を見てみると、かなりネガティブな言葉が並んでいる。

この世は夢のごとくに候。尊氏に道心給ばせ給候て、後生助けさせおわしまし候べく候。猶々、とく遁世したく候

(この世は夢のようなものだ。この尊氏に道心を与え、来世でお助け下さいませ。やはりなお、早くこの世を逃れたい。出家がしたいのです)

と、現世から逃げ出したい、とまでいっているのだ。しかも、最終的には、

今生の果報に代えて、後生助けさせ候べく候。今生の果報をば、直義に給ばせ給いて、直義安穏に守らせ給候べく候

(現世の果報はもう結構ですから、その代わりに来世でお助け下さい。現世の果報は、弟の[足利]直義に与えてあげてください。そして、直義が安穏でいられるようお守りください)

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なぜか、勇気が出てくる。不平不満の150篇。

人間愚痴大全

福田 智弘
小学館集英社プロダクション
2021-10-21

この連載について

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なぜか勇気が出てくる 人間愚痴大全

福田智弘

「今日も飯はうまくない」「アルコールでごまかすより外なかった」 天才と呼ばれる作家に芸術家、世界を変えた政治家に勇猛な武将まで、歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉に...もっと読む

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setagaya121 #スマートニュース 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

DADA21C 福田智弘 https://t.co/EoMORiuyZh 約1ヶ月前 replyretweetfavorite