こんにちは、自炊料理家の山口祐加です。日々の自炊を楽しみながら続けていくコツをお伝えする連載、第7回のテーマは「料理を続けるマインドセット」についてです。
自炊を始めてしばらく経ってくると、経験値が増えてくる分いろんな悩みが出てくるはずです。
・疲れている時でも作ろうと頑張ってしまって、結果余計に疲れる
・献立がうまく立てられない
・何を作ったらいいのかわからない
・自分の料理に自信がもてない。仕上がりにがっかりしてしまう
・料理するのがあまり楽しくない
今回は上記の自炊あるあるのお悩みに一つずつ答えていく形で記事を書いてみました。
「これは私のことだ!」と感じた箇所から読んでみてくださいね。
自炊は緩急が大事
お悩み:疲れている時でも作ろうと頑張ってしまって、結果余計に疲れる
自炊に限らず、中食や外食も含めて毎日何を食べるか考えるのは、見えない家事になっていると思います。そのときに食べたいものと、自分の身体のことを考えた栄養バランスと、お財布事情と常に相談しながら毎日献立を考え続けるのは、なかなか大変なことです。自炊するしかなかった時代から、外食や中食の選択肢が増えたゆえに生まれた悩みでもあります。
とある本で、「野生動物は食べ物が手に入らなくて飢えの苦しみはあるが、何を食べるかで悩むことはない」とあってハッとしたことがあります。食事は毎日行うことだから気を遣って大切にしたい気持ちと、毎日食事で悩んでいては大変だ!という気持ちのせめぎ合いが「食べて生きていく」ことなのだと思います。
自炊には緩急が大事で、元気があって食べたいものがある日は腕まくりをして作れば良いし、元気も食べたいものもそこそこな日は、作り慣れているものをささっと作るのが良いのです。疲れている時はお惣菜や冷凍食品に大いに頼って良いと思います。
何かしら食べられるものが食卓にあればOKとすれば、自分で作らなかった日も「今日はこういう日だった」で終わりにできます。頭も身体も疲れている日に無理をすると、どっと疲れて翌日まで響くことがあります。自炊に関するマインドセットは「やめなければ続いている(とみなす)」くらいでちょうどいいです。
自炊は自転車と同じで一度乗れるようになってしまえば、間が1週間、1ヵ月空いたとしても、次やるときに「全然できない」ことはありません。無理して自炊するのではなく、自分の身体の声を聞きながら、そろそろまた再開しようかなと思えた時に作ってみるのが良いでしょう。
目標思考で考えない。その日の最適解を都度出していくのが家のごはん
お悩み:献立がうまく立てられない
給食や和食屋さんなどで出てくる「定食」のイメージが強いからなのか、日本人は「献立は先に立てて料理する」と考えている人が多いように思います。ご飯や汁物があって、おかずに副菜と献立が決まっているとあとは何をそこに当てはめるか考えるだけなので楽といえば楽です。しかし「どうしても副菜が思いつかない」なんてことも起こりえます。そんな時は副菜として独立させるのではなく、おかずに野菜を多めにするなどで十分ではないでしょうか。 私は日々料理を作っていて、献立を先に立てるのではなく、なんとなく作っているうちに「献立らしくなった日」が多いです。普段は一汁一菜(ご飯・おかず・汁物)で食べることが多いので、気が向いたらそこに小さいおかずを足して結果的に一汁二菜、一汁三菜になるという感じです。おかずが一つでも三つでも、どっちでもいいと思っています。
「家のごはんはこれくらいやるべき」という自分の理想があるとすると、それに到達できていないと自分を責めやすくなってしまいますから注意が必要です。
例えば、お店で食べるプロの料理は完成形の理想があって、そこから棚卸しする形で食材や調理法を選んでいきます。けれど、家ごはんは自分や家族の体調、お腹の空き具合から考えて、その時の最適解を都度出していく行為です。「冷蔵庫にあるものでどうにかする」料理のジャンルなので、野菜のきれいなところだけ使って手間暇かけて相手を喜ばせるような飲食店の料理とは全く別物です。
また、品数が少ないと栄養のことも気になるかもしれません。私は前後三日くらいで栄養価を調整できればいいと思っています。例えばお昼は焼肉定食をがっつり食べたから、夜は野菜たっぷりのスープだけにしておく。旅行で外食が続いたから、胃を休めるために一食抜きにして、次のご飯はおじやにしておこうといったように、一日の中で完璧なバランスを目指すのではなく、数日の中で栄養バランスの帳尻が合えば大丈夫としておくと気が楽です。