借りパク奇譚

門をくぐるための命名 #3

【前回までのあらすじ】友人の山田に強引に山奥のお寺に連れられ、「借りパク懺悔の門」という儀式に参加することになった竹中。3万円を払って受付をすませると、待合室には男女2人の先客が。若い坊主に案内され、80畳ほどの広さの部屋に入る4人。部屋の中央には、圧倒的な存在感を放つ男がこちらを向いて座っていたーーー。前回のお話はこちらからどうぞ。

「お連れしました。亮潤りょうじゅん様、お願いします!」

若い坊主がよくとおるはっきりした声でそういうと、亮潤はゆっくりと目をあけた。

同時に、グワっと放たれる鋭い眼力、参加者一同、気圧されて直立する。

眼力にここまでビビったのは生まれて初めてかもしれない。早くここを離れたい。そう思うには十分の眼力である。

「皆様、本日はようこそお越し下さいました。本日『懺悔の門』をとり仕切ります。亮潤と申します。長い時間となります。どうぞ、楽な姿勢でお座りください」

ゆっくりとした口調で話す亮潤、促され、おれたちはおもむろにその場に腰をおろすも、その眼力にびびってか、楽な姿勢ではなく皆自然と正座になった。

「懺悔の門をくぐるのに必要なのは正直さです。皆様、今日は何よりも正直であって下さい」

「はい」

皆の返事がピッタリとそろう。

すごいな。おれは緊張の中で思った。これは気? と呼ぶものなのだろうか。何か得体の知れない力によって多少強引にも、おれたちの心がグワっとまとめあげられている。そんな感覚があった。

「それでは早速ですが、これより『名与の儀』をとり行います。皆様には最終的に懺悔の門をくぐっていただくことになりますが、それには普段使っている名前とは別の名前が必要となります。今から私が皆様一人一人の前へ行き、その人に合った名前を見つけ出し、それを与えていきます。各人はしっかりとそれを受け止め、そして受け入れてください。私が名前を宣言した後、それを受け入れる準備ができましたら、立ち上がり、私に一礼下さい」

「はい」

再び、皆の返事がそろう。

むむむ。どうやら「懺悔の門」とは思っていたよりはるかに大それた儀式なのかもしれない。おれはここへ来たことを後悔し始めていた。

亮潤はゆっくりと立ち上がり、とても静かな足取りでおれたちの方へ歩みよってくる。

皆の緊張が一気に高まる。

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借りパク奇譚

宮藤宙太郎

この世にはびこる「借りパク」。それを懺悔し、みそぎができる寺があったら…? 今まで散々借りパクしてきたという悪友に巻き込まれる形で、みそぎに参加することになった主人公・竹中。そこに新たな2人の男女も加わり、奇妙な形で儀式が進んでいく。...もっと読む

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