塙保己一「不便なものですね」

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど現代人と変わらない不平不満です。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の新著『人間愚痴大全』より特別公開します。(提供元:小学館集英社プロダクション)

30代、病気にまつわる愚痴

塙保己一(学者)

1746年-1821年。江戸後期の国学者。武蔵国保木野村(埼玉県本庄市)の農家荻野宇兵衛の長男として生まれる。幼名、寅之助。雨富検校の門に入り、のちに国学者となる。広範な文献を666冊にまとめた『群書類従』の編纂などで有名。

ハンディキャップをものともしない意志とユーモア

塙保己一は、その持ち前の集中力と記憶力、そして向学心によって、『群書類従』の編纂などに大きな功績を挙げた江戸時代の学者である。しかも、彼は6歳の時に病で失明している。まだ、点字などもない時代、本を読むこともままならないのに学問を志すというのは、大きなハンディキャップだったはずである。

彼は、著名な国学者である賀茂真淵をはじめとする幾人かの師に就いて学んだほか、あん摩をしていた時の客などから本の読み聞かせをしてもらうなどして知識を磨いた。彼の家には、約6万冊の蔵書があったとされるが、そのすべての内容を記憶していたという。

こんなエピソードがある。学者として彼の名が知れわたりはじめた頃、彼のもとには講義を聴きに多くの弟子たちが集まっていた。ある晩、弟子たちを前に『源氏物語』の講義をしていた時のこと。ふいに一陣の風が吹いて、部屋のろうそくの火が消えてしまった。街灯などなかった当時のこと。部屋は真っ暗になり、何も見えない。本を見ながら講義を聴いていた人もいるかもしれない。弟子たちは大慌てだったが、目の見えない保己一はそのまま講義を続けていた。

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なぜか、勇気が出てくる。不平不満の150篇。

人間愚痴大全

福田 智弘
小学館集英社プロダクション
2021-10-21

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なぜか勇気が出てくる 人間愚痴大全

福田智弘

「今日も飯はうまくない」「アルコールでごまかすより外なかった」 天才と呼ばれる作家に芸術家、世界を変えた政治家に勇猛な武将まで、歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉に...もっと読む

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