深緑の山道をどれだけ走っただろう。突然視界がパッとひらけ、山々に囲まれた寺とその手間の麓に『火理拍寺』と書かれた案内板が姿をあらわす。午後1時過ぎ、おれたちは「火理拍寺」通称「借りパク寺」に到着した。
「本当にあるんだな……」
寺の存在をにわかに疑っていたおれは、本物の寺を前に絶句する。
「当たりマエストロだなも~」
山田はおれの前にしゃしゃり出て、得意げに指揮するジェスチャーをしやがる。ウザすぎである。
収容台数30台ほどの専用の駐車場に車を止め、おれたちは山門へと続くなだらかな石段を登っていった。
よい場所だな、おれはすぐにそう思った。元来おれは神社、仏閣というものが大好きなのだが、今まで見てきた中でも、ここはかなり上位にランクインする。凛とした静寂がふんわりと体を包んでくるこの感覚、静寂は全てを浄化し、物事があるべき姿へと促しているような気がした。
山門を抜けると、いよいよその正面に本堂と右手に不思議な形の塔が現れ、おれも山田を思わずその塔に目を奪われた。山門の手前からその存在が確認できたその塔は、寺でよく見かける五重塔とは大きく異なっている。石造りでハノイ塔のような形状をし、上部にいくにつれ細くなっている。一体この寺の宗派はなんなのだろうか? webサイトにはそのあたりの情報は載っていなかったように思うのだが。
心地よい静寂は寺を奥へ進むにつれますます深まっていった。不思議である。駐車場からここまで、他の参拝客はおろか、寺の関係者も一人も見かけない。いくら
それでも本堂の横の受付所までやってくると、そこでようやく一人の
いやはや、受付の案内にも、確かに「借りパク懺悔の門」との記述がある。どうやらギャグではなくガチのようだ。
「懺悔の門に参加したいのですが」
若干引きぎみのおれを尻目に、山田はズンズンと巫女のところまでいって「門」への参加を申し出る。
山田が事前にフィアンセから聞いていた話。「借りパク懺悔の門」は月2回、毎月第1日曜の午前と午後それぞれ1回づつ開催されているということだった。午前の門はおれの寝坊により間に合わなかったので、我々は必然的に午後2時からの参加することになった。山田がそこで改め睨みを効かせてきたが、おれはそれをスルーする。
おれはいやいや、山田はやる気まんまん3万円払い、受付を済ませた。
「懺悔の門」の参加には、専用の服に着替える必要があるとのことで、次におれたちは受付左手の建物を入り、支度室へと向かった。
支度室入ってすぐの棚に、白い肌襦袢のようものと帯がS、M、Lとサイズごとに重ねてある。どうやらこれが参加者の衣装らしい。
「こういうの着たことあるか?」と山田。
「いや」とおれは首を振る。
和服を着る機会などまずないおれたちは四苦八苦。悔しくも若手のおっさん同士で助け合い、何とかそれを着込む。支度室にあったロッカーに荷物と貴重品を預け、次に指示された通り隣の待合室へとやってきた。
畳15畳ほどのスペースに、壁にそって椅子が並べられた待合室には、既に先客がいた。