「4年に一度起きるやつ」
カーリング女子日本代表チーム「ロコ・ソラーレ」を創設した本橋麻里は4年前の平昌五輪の最中、カーリングブームをインスタントに消費する流れを牽制するように、「カーリングが注目されている? 4年に一度起きるやつですよね」と述べていた。今回の北京五輪でも、キャスターがカーリングを真似てみたり、ロボット掃除機をカーリングに見立てて遊ぶ視聴者動画がとにかくあちこちで流れていたが、こういったブームの発生と消失を冷静に見ている人が育てたチームだからこそ、チーム力が上がったのかもしれない……という自分の分析もまた、すさまじく即物的である。
2018年に流行語大賞を受賞したのが「そだねー」だが、受賞会見でその言葉ばかりが取り上げられることに戸惑いを覚えたと明らかにしたのも本橋だった。今回の北京五輪、選手たちが「そだねー」や「もぐもぐタイム」を強調しなかったのは、かつての雑な消費を警戒したからなのだろうか。流行語大賞の選考理由には、「オリンピックの競技観戦で、癒されるということがこれまであっただろうか」「選手の間でいったいどれほど緊迫した議論が交わされているのだろうと耳を傾けると、聞こえてくるのは『そだねー』の声。休憩時間にはピクニックともみまごう円になっておやつを食べる『もぐもぐタイム』」と書かれている。あの緊張状態が続く攻防に「癒され」、休憩時間を「ピクニック」と形容してしまう感じは、まさに「4年に一度起きるやつ」なのかもしれない。
中国を褒めちぎったバッハ
先週のこの連載で、人権問題をひた隠しながら開催された今回の北京五輪について、メディアは、選手の物語を借りて酔いしれるのではなく、五輪の体制を根底から問い、監視すべきではないかと書いた。この動きはずっと弱かった、というか、閉幕までどんどん弱まっていった。IOCバッハ会長は、閉会式の長いスピーチで開催国・中国を執拗に褒めちぎったが、その理由は単純。アメリカのスポンサーが五輪への興味を薄めている中、次なる大口取引先を持ち上げるに決まっている。