50代、人間関係にまつわる愚痴
萩原朔太郎(詩人)
1886年-1942年。群馬県出身の詩人。27歳の年に北原白秋主宰の『朱欒』に6編の詩が掲載され詩壇デビュー。31歳で処女詩集『月に吠える』を出し、注目を集める。他に『青猫』『純情小曲集』『氷島』などを刊行している。
強迫観念に悩まされ続けた詩人の苦悩
「まっくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうえで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のようなみかづきがかすんでいる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』」
これは萩原朔太郎の処女詩集『月に吠える』の中にある「猫」という詩である。
一読して、意味はわかりづらいが、とんでもない個性がうかがえる。
そんな萩原は、50歳の年に記した『僕の孤独癖について』という随筆の中で
「僕は昔から「人嫌い」「交際嫌い」で通って居た」
と書いている。そして、「人嫌い」になった理由として、「比較的良家に生れ、子供の時に甘やかされて育った為に、他人との社交について、自己を抑制することができな」かったことを挙げ、そのため「小学生時代から仲間の子供とちがって居たので、学校では一人だけ除け物にされ」たという。いわゆる、いじめだ。
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