人が頑固になっていく理由
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
先日、僕のnoteに女性の方からこんな相談をいただきました。仲のよい夫婦なのだけど、ここ数年どうも夫と話がかみ合わなくてお互いイライラしている。夫を嫌いになったわけではないのだが、大好きで尊敬していた人が、頑固で説教くさい老人になっていってる感じがして、悲しくてやり場のない怒りをぶつけてしまう。どうすれば良いのか。
というわけで、今回はそれを考えてみます。
ある喫茶店店主の本にあったエピソードです。開店当初、「どんなお客様にも明るく接して心地よいお店を心がけよう」と思っていたその店主。一人の若い女性が来店して、その喫茶店をすごく気に入ってくれて、ランチを食べてお茶を飲んで、店主ともすごく話が盛り上がって、またデザートも注文してくれました。その後、お会計しようとして「あ、財布の中のお金が足りない。今ちょっと銀行で下ろしてきます」と言ったのですが、出て行ったきり戻ってこなかったそうなんです。
ショックを受けたその店主は、「どんなお客様にも心を開いて接客する必要はないんだな」と思い直しました。「世の喫茶店のマスターたちが、どうしてみんな頑固なのかやっとわかった。どんな人でも受け入れていると心が疲れてしまうんだ」と気づいて、それから自分も頑固なマスターになったそうです。
このように、人が頑固になってしまう理由として、「こちらはとても前向きな気持ちでいたのに、理不尽な経験をして心を閉ざしてしまった」というのがあると思います。そしてもうひとつ、人が頑固になってしまう理由があります。
僕は若い頃からカウンターで「年齢を重ねた成功者」の方をよく接客しているのですが、得てして「自分の成功体験に固執してしまう」ということがあります。例えば、クリエイティブなジャンルですごく成功して有名になった人がいたとします。でも、時代が変われば、その人の感覚ってすごく古いものになってしまいますよね。
そういう方たちが、若いバーテンダーの僕に、その古い感覚を押しつけてくることがよくあるんです。わかりやすいところだと、新しい感覚の音楽や、そういう流行をすぐに否定したり、古いスタイルの音楽を持ってきて、「林さん、これかけて」と押しつけてきたりします。もちろん流行だけでなく、「社会は、ビジネスはこういうものだ」という話を、自身の成功体験だけを元に、とても主観的に話したりします。