北里柴三郎「数十年来もこんな馬鹿々々しき弊害が残っている」

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど現代人と変わらない不平不満です。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の近刊『人間愚痴大全』より特別公開します。(提供元:小学館集英社プロダクション)

50代、不遇・人生にまつわる愚痴

北里柴三郎(細菌学者)

1852年-1931年。明治大正期の医学者、細菌学者。肥後国(熊本県)の生まれ。ドイツに留学し破傷風菌の純粋培養に成功。また、抗毒素、ペスト菌の発見という功績を記す。伝染病研究所所長を務めたのち、北里研究所を創立した。

悪しき習慣に不満をたらたら

「日本の細菌学の父」といわれる北里柴三郎は、ドイツ留学中、細菌学の権威でノーベル賞受賞者でもあるコッホの下で学んでいる。いわば、コッホは北里の恩師である。

ところが、そのコッホが来日した時、北里は恩師に対して嘘を述べたという。果たして、どんな嘘だろうか?

来日したコッホに同行して富士山見物に行き、小休止をとっていた時のこと。ちょうど大掃除の後だったらしく周囲の家屋の周りには石灰が撒かれてあった。当時、大掃除の後には消毒のために家の周りに石灰を撒く習慣があったのだ。

それを見たコッホは

「那の石灰は何んの為に撒くのか」

と北里に質問した。これを聞いて北里は冷や汗をかいた。なんら汚染されているわけでもない家の周囲に石灰を撒いたところで伝染病の回避などの効果があるわけでもない。まったくの無駄である。もちろん、北里にはそれがわかっているが、それが長年の日本の習慣なのだから仕方がない。しかし、正直にそういえば

「お前が日本に居て斯んな弊害を改良せずに黙って居るのか」

と怒鳴られるだろう。そこで北里は、

「那れは大掃除を行った目印に石灰を撒いて置くので[す]」

と嘘をついてごまかしたという。

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なぜか、勇気が出てくる。不平不満の150篇。

人間愚痴大全

福田 智弘
小学館集英社プロダクション
2021-10-21

この連載について

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なぜか勇気が出てくる 人間愚痴大全

福田智弘

「今日も飯はうまくない」「アルコールでごまかすより外なかった」 天才と呼ばれる作家に芸術家、世界を変えた政治家に勇猛な武将まで、歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉に...もっと読む

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コメント

sabochin 大掃除の後に家の周りに石灰を撒く習慣なんかあったんだ…いつからいつまでの間なんだ…? 3ヶ月前 replyretweetfavorite