20代、恋愛にまつわる愚痴
スタンダール(小説家)
1783年-1842年。本名、マリー=アンリ=ベール。小説『赤と黒』『パルムの僧院』や評論『恋愛論』などの傑作を残した作家として有名。文筆活動のほかに、ナポレオンのイタリア遠征に従軍したほか、イタリア領事などにもなっている。
異性への愛が叶わないコンプレックス
『赤と黒』などの小説で有名なスタンダールは、実は生涯、さまざまなコンプレックスに悩まされていた人物だった。
裕福なブルジョア家庭に生まれたスタンダールだったが、第一のコンプレックスは、その容姿にあった。肥満気味で決して美少年といえる容貌ではなかったのだ。
また、スタンダールは幼少期から自分の母を熱烈に愛し、その反面、父親を猛烈に憎んでいた。典型的な「エディプスコンプレックス」である。
スタンダールが、父を憎んだ理由の一つに、父の容姿が醜かったことが挙げられる。そして、自分の醜さは、その父譲りのものだと知ったことが、彼の心に二重の意味でコンプレックスを植え付けたのである。
一方、愛しき母はスタンダールが7歳の時に亡くなってしまう。彼が初めて愛した異性は、永遠に帰らぬ人となってしまったのだ。こうして、異性への愛が叶わぬというコンプレックスが、盛大に幕を開けたのである。
「自分は醜い」と自覚していたスタンダールだったが、人一倍女性に恋をした。ある時は女優に、ある時は未亡人に、ある時は親戚であり恩人でもあった人の妻に、許されざる恋をした。