一体、どういうことだろう
京王線に縁のない人には申し訳ないが、清原果耶についてではなく、京王線の広告についてのみの話になる。今、京王線の駅構内や車内には、清原果耶が遠くを見つめている写真と共に「冬の高尾山は、富士山だ。」というキャッチコピーが掲げられている。京王線に乗る度に、「これは一体、どういうことだろう」と考え込むのだが、正直、たいして考え込むことはせず、本を読むなり、スマホを見るなり、別の作業に移行してしまう。先日、京王線に乗ると同時に、手持ちの本を読み終えてしまったので、目的地までの10分ほど、このコピーについて考えてみることにした。以下はその記録である。
「本当の主役はあなたです」
冬の高尾山は、富士山ではない。シュークリームがフルーツサンドではないように、GLAYがLUNA SEAではないように、高尾山は富士山ではない。しかし、「デザート」という括りや、「ロックバンド」という括りを設ければ、それらは同じ枠組みに入る。富士山はどう考えても日本を代表している山だから、「まっ、おまえたちも俺と同じってことでもいいぜ」と「大きな山」という枠組みを設けられるとしたら、それは、高尾山側ではなく富士山側のほうである。サッカー選手は「サポーターは12人目の選手です!」と言うが、サポーターは「選手はある意味でサポーターですよね!」とは言わない。主従関係はないとはいえ、さすがに、主役は選手だとの前提がある。
「本当の主役はあなたです」と最後になって伝え続けてきた24時間やってる番組があるが、どうしておまえ達に主役かどうかを決められなければいけないのか、と苛立ってみるのは健全である。ありとあらゆる断言には、どうして断言してくるんだおまえ、という挑戦的な姿勢で迫る選択肢を残しておいたほうがいい。「おまえに言われる前から、主役は俺だよ」と日本テレビに電話した人はいるのだろうか。いたとしたらその人の味方でありたいが、その人は、別にこちらからの賛同や支援を求めてはいないだろう。で、果たして、冬の高尾山は、富士山なのだろうか。
高尾山から富士山を見ているからだった
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