ある一定のドタバタを欲してしまう
今回の紅白歌合戦、会場は東京国際フォーラムだった。何度か会場へ行ったことのある人ならば、「あそこをこうやって使ったのか!」という興奮や理解もあっただろうが、よくわからない人にとっては、それぞれ異なる場所で歌っている感じが例年以上に強かったはず。
会場の中と外、そして、渋谷にあるNHKのスタジオ、事前収録映像などを混ぜ合わせ、次の歌手が登場するまでのドタバタが極力薄められていた。作り上げる側はそれを成功と捉えるのだろうが、視聴者は、少なくとも私は、紅白に対して、ある一定のドタバタを欲している。「演歌歌手の後ろで踊らされているアイドルが、過密スケジュールの中で振り付けを覚えたために、まだ不安定さが残る」という毎年恒例のアレもなかったが、いつも「こういうのやめれば?」と突っ込んできたアレを少しだけ欲してしまうのだから、観る側もいい加減なものである。
鈴木雅之のサングラスに映り込む三山ひろしを見たかった
今年のテーマは「カラフル」で、そこには「多様な価値観を認め合おうという思い」(公式サイトより)が込められていた。「紅組司会」「白組司会」「総合司会」という従来の呼称を全て「司会」に統一したのがその第一歩らしいのだが、特に二歩目はなく、従来通り紅白で採点していた。「カラフル」の流れで取り上げられたキーワードがSDGs。今さらこのレベルから説明するのか、という映像が流れた後に登場したのが、YOASOBI+SDGsこどもユニット・ミドリーズだった。
その横で、子ども相手だろうが、いつものようにリズミカルに体を動かす鈴木雅之と、そのさらに横でけん玉に励む三山ひろしが時折映り込んでいた。多様な価値観というのは、「みんなで認め合う」だけではなく「たとえ、それぞれのやりかたを理解できなかったとしても受け止める」も用意されなければならないのだから、完全に混じるわけではない両者の姿はカラフルだった。「鈴木雅之のサングラスに映り込む三山ひろしを見たかった」とツイートしそうになったものの、それはさすがに個人的な願いに過ぎないと取り下げた。