​サンタクロースへの手紙

今日はクリスマスイブ。2021年最後の更新は、林伸次さんがバーのカウンターで聞いた、クリスマスにまつわるお話をお届けします。20年以上も続いたサンタクロースとある少女の手紙のやりとり、そこにはどんな思いが込められていたのでしょうか。

天国の母から少女に届いた手紙

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

この時期、バーのカウンターでよくある会話で、「サンタクロースを何歳まで信じていたか?」というのがあります。「両親が真剣に演出していたから、小学生くらいまで気づかなかった」とか、「信じているふりをしてあげていた」なんて話も聞けて、「家族って色々とあるもんだな」といつも温かい気持ちになります。

そんな話で盛り上がっていたら、百貨店で働いている木村さんがこんな話をしてくれました。

「今から23年くらい前なんですが、私、オモチャ売り場に配属されまして、何か面白いサービスを始めようと考えて、子どもたちに『サンタクロースさんにお願いの手紙を出そう』という企画を始めたんです。子どもたちは『プレステが欲しい』なんて手紙に書いて渡してくれるので、それを親御さんが覗き見たり、後で店内に飾られた手紙を見に来て、プレイステーションを買っていってくれるわけです。オモチャ売り場の売り上げも狙った企画ですね」

「それはなかなか面白い企画ですね。売り上げも見込めるしすごいですね」と僕。

「上司からもお客様からも好評で、ずっと続けていたのですが、あるとき学生時代からの友人の5歳の娘さんから、『サンタさん お願いがあります。ママに会いたいです』と書かれた手紙を受け取ってしまいました。その友人の奥さん、2年前に亡くなっていたんです。もらった手紙はツリーに飾るのですが、私は心配になってその友人に電話をしました。友人はまだ手紙を見ていなかったらしく、電話の向こうから重苦しい声で『そうか。そりゃそうだろうなあ。まだ小さいからよくわかってないんだろうな』と言っていました。

私は自分の企画のせいでこういう気持ちになってしまう人も出てくることがあるんだ、と反省し、『もし良かったら娘さんに、天国のママからってことで、うちのデパートから手紙を出そうか』と提案してみました。

彼は快諾して、2人で手紙の内容を考えました。ママは天国で楽しく暮らしていること、いつも彼女を見守っていること、この間幼稚園でいじめられている子を助けたのはすごく偉いなって感じたこと、パパとこれからも仲良くねってことを盛り込みました。次の日、かわいいサンタの便せんに書いて封筒に入れ、投函しました」

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

NaokiEndo サンタさん、良い仕事をしていますね。 https://t.co/X7Ax8LaGPU 5ヶ月前 replyretweetfavorite

kinop_shiodome https://t.co/JedVFquAzc 泣いた、、いい話にも程が有る 5ヶ月前 replyretweetfavorite

Koharu_yoga サンタクロースへの手紙|林伸次 @bar_bossa | 5ヶ月前 replyretweetfavorite

cookingdaichan サンタクロースへの手紙|林伸次 @bar_bossa | すてきだな。メリークリスマス。 木村さん、このシャンパーニュの味、一生忘れないだろうなぁ。 5ヶ月前 replyretweetfavorite