上白石萌音に学ぶ

今回の「ワダアキ考」で取り上げるのは、現在NHKで放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で主演を務める上白石萌音です。武田砂鉄さんが体得したいとまで考える、彼女の「感じの良さ」とは、いったいどういうものなのでしょうか?

「感じが良い」とは

こちらが会ったこともない人について「感じの良い人だよ」と伝えてくる人がいて、「へー、そうなんだぁ」とは答えてみるものの、この「感じの良さ」って、果たして共有できるものなのか、とは思う。「気象予報士は天気予報が外れたら、翌日、昨日はすみませんでした、って謝るのに、占い師ってやつは、まず謝りませんよね。適当な職業ですよ!」なんて言った時に、ニコニコ笑ってくれるのが「感じが良い」のか、身を乗り出して「その着眼はなかったな」と語り合おうとしてくれるのが「感じが良い」のか、それは、人それぞれである。自分はもちろん、「その着眼はなかったな」のほうを「感じが良い」とするのだが、そこで結託している二人って、側から見ると「あの人たち、マジで感じ悪いよね」と思われる可能性が極めて高い。

朝ドラに出ているヒロインを見ていると、全方位的に「感じの良さ」を保たなければならないのだろうなと、勝手な予測をした上で、気苦労まで勝手に理解しようとしてしまう。もう何年も前に、「清廉性」なんて言葉を理由にして、アナウンサー職に内定が決まっていた女性の採用が取り消されそうになったことがあったが、プライベートな付き合いならばまだしも、圧倒的な他者たちがテレビの中の人に向けてそれを求めるのは、どんな番組や作品であっても、奇妙ではないか。それを求められる度合いがもっとも高いのが、朝ドラのヒロインだろう。感じの良さや清廉性が、もはや前提になっている。

感じの良いゲラ

上白石萌音のエッセイ集『いろいろ』の巻末には、この本ができあがるまでの工程がカラーページで載っており、使用する紙やフォントまで本人が検討する様子が確認できる。上白石は移動中に本がないと落ち着かないほどの読書家で、だからこそ、自身初のエッセイ本の出版に強いこだわりを見せる。そのページには、ゲラ(校正刷)を手書きで修正した写真まで載せている。通常、ゲラ刷りには、校閲者からの「このような表現にしたほうがいいのではないか」「〇〇辞典で調べたところによると、こっちのほうが適切ではないか」といった提案が書かれている。書き手は、その提案を反映して文章を直したり、当然、無視したりもする。校閲者はそれを見越して、多めに提案をしてくる。

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武田砂鉄責任編集。多量記事で多角的に、「TBSラジオ」を物語る。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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