ワクチンという予行練習。免疫細胞は記憶する

一度戦った相手のことは記憶する免疫システム。その仕組みを利用したのがワクチンです。では2度目の戦いの際には、具体的にどういうことが起こって感染を防ぐことができるのでしょうか?

免疫システムの真髄「2度がかりなし」

「2度がかりなし」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 大学で免疫学を学ぶと必ずと言っていいほど耳にする言葉です。この言葉のシンプルな意味は、一度かかった病気に2度かかることはないという意味です。

身近な例をあげれば、おたふくに1度かかると2度かかることはないというのがわかりやすいと思います。2度がかりなしはすべての病気ですべての人に当てはまるわけではないですが、1度ある感染症を経験すると2度目はかからない、もしくはかかっても軽い症状で済むということが古来から経験的にわかっていました。

じつはこの「2度がかりなし」は、これまで紹介してきた獲得免疫細胞たちの“ある機能”によって生じていることが、免疫学研究の蓄積の結果、説明できるようになりました。


戦いが終わっても警戒は怠らない 

これまで述べてきたとおり、新型コロナウイルスが体内に侵入すると、飛脚役の自然免疫細胞からの情報をもとに侵入者と戦えるスペシャリスト獲得免疫細胞たちが選ばれて増殖します。そして、それぞれの獲得免疫細胞が適切なレベルで得意技を駆使することができれば、体内のウイルスはみるみる減少していきます。

免疫を活性化させる炎症性サイトカインの産生は次第に減少し、傷ついた組織も修復されていく中、1つだけさみしい出来事が起こります。新型コロナウイルスと戦ってきた最強の戦士、スペシャリスト獲得免疫細胞が死んで、その数を減らしていくのです。

どんな細胞の生存にも貴重な栄養の供給は必要で、私たちの体は栄養の配分を状況に合わせてやりくりしています。もはや敵がいなくなった状況下で、大量に増えた獲得免疫細胞を維持せずに減らしていくことはとても合理的な反応だと言えます。

ただし、すべての細胞が失われるのではなく、少数が記憶細胞として体内に残ることがわかっています。この記憶細胞は1度戦いにでた経験を覚えているので、その細胞が専門とする病原体が再び体内に侵入して来た際に、初めての戦いの時に比べてより素早くより強い免疫反応を誘導することができます。

たとえばB細胞を例にとると、記憶B細胞が存在する時に2度目の感染が生じれば、下の図のように記憶細胞が1度目より効率よく活性化・増殖して、1度目より早く・多くの抗体が産生されるのです。


2度目の感染では質のいい抗体がより早く、より多く作られる

冒頭に紹介した2度がかりなしを実現する鍵となるのがこの記憶細胞の生存期間です。これは病原体の種類によって異なることがわかっていて、一度形成されれば生涯記憶細胞の生存が続く場合もあれば、1年も経たずに記憶細胞が失われてしまう場合もあります。病原体によってなぜ記憶細胞の寿命が変わるのかは未だブラックボックスで、さらなる研究が待たれています。


ワクチンで免疫記憶をつくる 

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コロナ時代に知っておきたい 免疫入門

新妻耕太

新型コロナウイルスが体の中に侵入すると、何が起こるのか? チームワークを駆使し、ウイルスを撃退していく免疫細胞たち。そして免疫システムの裏をかき、数を増やそうとするウイルス…。巷にあふれる誤情報に惑わされず、正しく情報を判断するために...もっと読む

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コメント

digk349or02cjf https://t.co/TRb9xuESyZ 4ヶ月前 replyretweetfavorite

K9FCR 「コロナは二度あり」なのです。それをきちんと説明しないと! 4ヶ月前 replyretweetfavorite