免疫システムの裏をかく新型コロナウイルスの戦略

樹状細胞の働きで、新型コロナウイルスに対抗できるスペシャリスト集団を作り出すことに成功した免疫システム。しかし一方でウイルスの側も、免疫細胞からの攻撃をかわすべく、ある仕掛けをしてきます。

前回、新型コロナウイルスと戦うことのできる専門家キラーT細胞が選び出されて増殖し、感染した細胞だけを死なせてくれることを解説しました。ついに最強の戦士が現れた!と盛り上がりたいところですが、そう一筋縄で収まってくれないのがこのウイルスの厄介なところです。

第2回で新型コロナウイルスには警報物質であるI型インターフェロンの産生を抑える機能があることを述べました。これをされると、周囲の細胞に警報が十分に伝えられず、免疫が正常に働かなくなってしまうのです。新型コロナウイルスには、これに加えてもう1つ、キラーT細胞からの攻撃を避けるための「身を潜める機能」も兼ね備えていることがわかっています。

このウイルスのしたたかさを理解するために、まずはキラーT細胞の活躍の仕方について、もう一段解像度を上げた視点から見ていくことにしましょう。


免疫から逃げるウイルス

キラーT細胞はkillerの名のとおり、「これ!」と狙いを定めた細胞に死を誘導するとても強力な機能を持ちます。まさに肉を切らせて骨を断つ。ウイルスに感染した目の前の細胞を失うことにはなりますが、この細胞が大量のウイルスを吐き出した場合、もっとたくさんの細胞が犠牲になるので結果的には利のほうが多いわけですね。

細胞の命を奪える強力な機能を持つ分、キラーT細胞には殺すべき対象を正確に見極められる機能がなくてはなりません。さもなければ、本来は殺さなくていいような細胞を殺してしまい、私たちの体に害を及ぼしてしまうからです。

その機能の要となるのが、キラーT細胞の表面にあるセンサータンパク質・T細胞受容体です。キラーT細胞は、樹状細胞に選ばれて増える時と感染した細胞を見つけて殺す時の2つの場面で、T細胞受容体が働いて活性化シグナルを送ります。

キラーT細胞はそれぞれがわずかずつ異なる形をしたT細胞受容体を持っていて、これにぴったりと合致してハマる相手に出会えた時にだけ活性化できるのです。それではT細胞受容体は何に反応しているのでしょうか?


樹状細胞に選ばれて活性化する専門家キラーT細胞(イメージ図) ©︎Juan Gaertner/Shutterstock.co

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コロナ時代に知っておきたい 免疫入門

新妻耕太

新型コロナウイルスが体の中に侵入すると、何が起こるのか? チームワークを駆使し、ウイルスを撃退していく免疫細胞たち。そして免疫システムの裏をかき、数を増やそうとするウイルス…。巷にあふれる誤情報に惑わされず、正しく情報を判断するために...もっと読む

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utuse #スマートニュース 11日前 replyretweetfavorite