阿佐ヶ谷姉妹を演じる2人の巧妙さ

今回はお笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ集を元にしたドラマ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』について取り上げます。このドラマを見ていると「世界平和」について考えてしまうという武田砂鉄さん、阿佐ヶ谷姉妹と世界平和がどのように繋がるのでしょうか?

「今うちにトマトありましたっけ?」

阿佐ヶ谷姉妹とは、幸いなことに個人的な接点がある。2016年6月、姉・渡辺江里子が、妹・木村美穂に向けてLINEするはずだった「カラオケ終わってヨーカドーにいます。今うちにトマトありましたっけ?」を、あろうことかツイートしてしまい、全世界から「あります」などの反応が相次いだ。後日、その顛末を深追いするインタビューを敢行したのだ(『Quick Japan Vol.127』所収)。

話を聞くと、阿佐ヶ谷にある西友とイトーヨーカドーの違いを熱弁し、前日の名古屋ロケでもらったローストビーフをおいしいうちに食べなければというプレッシャーが、ローストビーフ丼を彩るトマトの存在を急いで問う誤爆につながった、との自己分析に広がった。一通り話が終わると、マネージャーから、「昨日のロケで間違えて持って帰ってきてしまったサングラス、持ってきてくれましたか」と問われた渡辺。すると、喫茶店じゅうに渡辺の「ひえええ」との奇声が響き渡る。カバンに入っていたのは、布団用の大きな洗濯バサミだった。木村は、「こういうこと、よくあるんです」と一人で落ち着いていた。あの落ち着きが脳裏から消えない。

行動と批評と検証が二人の間で済んでいる

2人のエッセイ集をドラマ化したNHK『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』を欠かさず観ている。姉・渡辺江里子を演じるのが木村多江、妹・木村美穂を演じるのが安藤玉恵だ。ドラマ化発表とともに公開された姿形の再現度に驚かされたのだが、いざ始まってみると、声も所作も似ている。しかし、ドラマというのは、原作やモデルの再現度を問うものではないのだから、その点だけを抽出して評価するべきではない。だが、その再現度がそのままドラマの魅力につながっている場合は、どうしても「似てる!」という興奮が先立ったままになる。

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武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

e7motionpicture #SmartNews まさに砂鉄さんの「日本の気配」を読んでるところだったので、この論考は嬉しい限り。 https://t.co/kDg7aAT5dv 10日前 replyretweetfavorite

htkd_ 待ってました👏 11日前 replyretweetfavorite

Ntest17ky 「行動と批評と検証が二人の間で済んでいる」という分析に唸った。 12日前 replyretweetfavorite

tsuki_no_tsu ひと月以上前から放送楽しみに待っていて、毎週欠かさず観ている😍世界平和へ繋がった! 12日前 replyretweetfavorite