人生とは「ひとり用の小舟」に乗っているようなもの

今回は、蘭ちゃんがサクちゃんとお話をした時のエピソードです。人生を「マラソン」や「綱渡り」のように進み続けてきた蘭ちゃんですが、サクちゃんから「その設定は、厳しすぎるよ」と言われたのだそう。サクちゃんの自分とは正反対の設定を聞いて、もっと安心できる設定に変えてみようと試みます。(毎週火曜日更新)

サクちゃんへ

こんにちは。

この間の東京出張ではありがとうございました。
一年振りにサクちゃんと会えて嬉しかったです。

サクちゃんには、「蘭ちゃんって、会うと思ったより背が高いんだよね」と言われましたが、私もまさに「サクちゃんって、会うと思ったよりも小柄なんだよな」と思っていました。あと、最近入れたという髪の毛のポイントカラーって実際はこんな色なんだなとか、サクちゃんってスカート率高いんだなとか(パンツルックの時を見たことがないです、まだ3回しか会っていませんが)。

Zoom越しではわからないことが、直接会うとよくわかる。雨の日にはこういう靴を履くのだなとか、ご飯の注文時には結構悩む方なんだなとか。そういう、言葉にならないところに人となりってじわじわと出ているような気がします。

久しぶりに会ったサクちゃんは、いつも話しているサクちゃんと同じなんだけど、ちょっと違う。そのズレは寂しいものではなく、まだまだサクちゃんのことを知っていけるのだなという余白のように感じました。

ー・-・-

この間サクちゃんとZoomでしゃべった時、「蘭ちゃんは人生が『マラソン』設定なんだね」と言われました。確かにそう。私は「人生」を「マラソンのようなものだ」と思っています。ゴールに向かって、ひたすら走る感じ。

でもそれはまだ調子がいい時の感覚で、調子が悪い時には「人生」って「暗闇での綱渡りのようなものだな」と感じています。真っ暗いうすら寒い空中で、両手で握った綱しか見えない。グラグラと揺れながら、恐怖と不安にまみれながら、とにかく家に帰りたいと思っている感じ。サクちゃんのいう通り、これも「設定」です。調子の悪い時は、よりシビアな設定にしてしまっているものなんだなと話していて気がつきました。

サクちゃんは「人生」を「広場でピクニックをしている感じ」と言っていました。好きな場所でレジャーシートを敷いていいし、きのこ狩りに行ってもひなたぼっこをしていてもいい。私の設定とは全然違っていて、思わず「その設定、いいなー!」と言ってしまいました。

そこで一緒に、私の設定変更について考えてくれましたね。人生を「マラソン」や「綱渡り」のようなものと設定するのではなく、もっと安心できる設定にできないか?

私はいつもゴールを設定していました。「マラソン」にせよ「綱渡り」にせよ、早く終わらせて家に帰りたい。家でゆっくりお風呂に入り、ソファに座り、休息を得たい。私にとってゴールとは、きっと「家」なんです。安心できる場所。

これまでの設定では、「家」はまだ手に入っていないものでした。現在は風吹き荒ぶ過酷な外に身を置いていて、いつか「家」でぬくぬくしたいと思っている。「家」とは私にとって、「死」とほぼイコールだったのかもしれません。

「その設定は、厳しすぎるよ」
とサクちゃんは言っていましたが、そう言われて「確かにそうだ」と思いました。
せっかくなら生きている間に「家」でぬくぬくしたい。できるだけ長時間。
そう思って私は、「自分はすでに家にいる」設定にしようと思ったのでした。

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サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記

土門蘭 /桜林直子

東京でクッキー屋さんをしている「桜林直子(サクちゃん)」と、京都で小説家として文章を書く「土門蘭(蘭ちゃん)」は、生活も仕事も違うふたりの女性。この連載は、そんなふたりの交換日記です。ふたりが気が合うのは、彼女たちに世界の「そもそも」...もっと読む

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