松坂大輔引退会見を見た

プロ野球選手の松坂大輔が引退しました。夏の甲子園で優勝し、プロ入りしてから23年、同じ世代の人間はプロ野球に限らず「松坂世代」と呼ばれるほど、強いインパクトを残してきました。松坂世代より少し年下の武田砂鉄さんは、「平成の怪物」の引退をどのように感じているのでしょうか?

スポーツ選手に自分を重ね合わせる傾向

スポーツ選手へのインタビュー経験は数えるほどしかないが、彼らは自分の体の中に成功体験がしっかりと刻まれており、それを反復する話になりがちだ。なので、プラスアルファの部分を新たに発掘するのがなかなか難しい。固めてきた思考を揺さぶらずに、いつもの感じを守ろうとする。そこに入り込むインタビューができなかったなと落ち込むのだが、たとえば、少なくない選手がイップスに悩まされるのは、「ぶれないメンタル」が表裏一体で危うさを持っていることの証でもあり、いつもの感じを大切にするのは当然のことなのだろう。自分なんて、毎日のようにメンタルがぶれているので、ぶれている状態に慣れている。こっちのほうがいいに決まってるだろと思っているが、「ぶれないメンタル」になったことがないので比較するのは乱暴である。

最近はあまり見かけなくなったが、スポーツ選手がこぞって『〇〇力』『〇〇思考』『〇〇心』と題した本を出版している時期があった。たとえば、サッカー選手が、後半30分台のもっとも厳しい時間帯、それでもボールに食らいついていくためには体力よりもメンタルが重要だと言う。それを読むと、「大変だなあ、すごいなあ」と素直に思う。そう思うだけだ。だが、それを受けて、自分の日常生活に移行して考えられる人が多くいるらしく(だからこそこの手の本は売れる)、同じように「すごいなあ」という感想を持つものの、同じ「すごいなあ」でも質感は違う。後者に対しては、言葉を選ばず言えば、傲慢だな、なんてことを思ってしまう。

「自分に染み込ませる系」のコメント
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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

keizin0309  力の衰えが要因で舞台から去る人をねぎらう気持ちは、高齢者を敬う気持ちと同質なものだと思う。そんなにひねくれなくてもいいのに 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

Mascarponen |武田砂鉄 @takedasatetsu |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 https://t.co/QEpHGqVSlh 約1ヶ月前 replyretweetfavorite