このごろ、よく泣く」太宰治

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにはおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど、現代人と変わらない不平不満です。ただただ情けない姿の数々。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の新著『人間愚痴大全』より特別公開します。

20代、不遇・人生にまつわる愚痴

太宰治(小説家)

1909年-1948年。青森県出身。本名津島修治。『走れメロス』『ヴィヨンの妻』『斜陽』『人間失格』など数多くの傑作を残したが、最期は玉川上水に入水して自ら命を落とす。遺体が発見されたのは、奇しくも彼の誕生日だった。

若かりし頃の太宰の苦悩

太宰治といえば、いまだに熱狂的なファンも多い日本の文豪の一人だ。その作品はもちろん、ファンの間では、残された書簡の数々までも、愛されている。

中には、少々奇妙な手紙もある。その一つを、少々長いが引用してみよう。

「ぼくをそっとしておいてくれ。そっと人知れず愛撫してくれたら、もっと、ありがとう。
このごろ、よく泣く。ぼくはいま、文章を書いているのではない。しゃべっているのだ。口角に白いあわを浮かべ、べちゃべちゃ、ひとりでしゃべりどおしだ。
千言のうちに、君、一つの真実を捜しあててくれたら、死ぬほどうれしい。ぼくは君を愛している。君も、ぼくに負けずにぼくを愛してくれ」

正直、少々支離滅裂気味だ。本人も「真実を捜しあててくれたら、死ぬほどうれしい」といっているくらいだから、文章が難解で、意図を理解することが難しいのも当然といえるだろう。この手紙は同郷、同い年の作家で、親しかった今官一に宛てたものである。文中に

「このごろ、よく泣く」

とあるが、太宰がいったい何が原因で泣いていたのかは、そういった理由で手紙の文章からはつかめそうもない。しかし、この手紙が書かれた1935年というのは、太宰の精神に大きな打撃を与える事件が重なった年でもあった。

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sabochin 太宰の最期を思い出す度に井伏鱒二のことを考えて辛い気持ちになる 19日前 replyretweetfavorite

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