童貞を失ったのがすこぶる遅く、これが人生の一大痛恨事」三島由紀夫

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた! 渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにはおれなかった愚痴150篇。女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど、現代人と変わらない不平不満です。ただただ情けない姿の数々。読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション! 10月21日発売の新著『人間愚痴大全』より特別公開します。

30代、恋愛にまつわる愚痴

三島由紀夫(みしま・ゆきお)・小説家

1925年-1970年。東京生まれの小説家。本名、平岡公威(きみたけ)。『仮面の告白』『金閣寺』『潮騒』『豊饒の海』などの傑作を残す。「楯(たて)の会」という組織を結成し、自衛隊市谷駐屯地に乱入。隊員に決起を促したが果たせず、演説後、切腹した。

三島小説にたびたび出てくる「童貞」

三島由紀夫は、逆説的に道徳を説いた傑作エッセイ『不道徳教育講座』の中で、こんな言葉を述べている。

「童貞を失ったのがすこぶる遅く、これが人生の一大痛恨事になっている」

もっとも、三島は1925年生まれで、20歳の時がちょうど終戦の年。童貞を失う機会に恵まれなかったのも不思議ではないが、当人にとってはそれがいたく不満であったらしく、「一大痛恨事」などと愚痴を述べただけでなく、後世の若い男性たちには

「童貞は一刻も早く捨てよ」

との言葉を残している。

そういわれてみれば……、童貞を捨てるのが遅かったことがよほど痛恨だったからか、三島の小説の中には、「童貞を捨てる話」あるいは「童貞を捨てられなかった話」が、たくさん出てくる。

たとえば、三島の「半自叙伝的小説」といわれる『仮面の告白』には、友人から悪所(遊郭)に誘われる話があり、主人公の「私」は

「二十三にもなって童貞だと思われまい」

と遊郭へ行くのだが、性的不能となり童貞喪失のチャンスを失っている。

名作『金閣寺』でも、主人公は

「君は童貞だ」

と学友柏木にいわれ、その後も柏木が60歳ほどの寡婦を相手に童貞を捨てた話を聞かされたり、柏木の知る女を相手に童貞を捨てようしたりする。しかし、いよいよ童貞喪失かと思われた刹那、主人公の脳裏に金閣の幻影が現れ、行為は未遂に終わってしまうのだ。

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sabochin 文豪たちの悪口本みたいな趣があるな 22日前 replyretweetfavorite

tjmlab ᕙ( ˙-˙ )ᕗ 22日前 replyretweetfavorite