雨上がり決死隊の解散動画を観た

8月17日にAbemaTVで放送された番組で解散を発表し、32年間の歴史にピリオドを打った、雨上がり決死隊。大きなニュースとなっているこの話題、武田砂鉄さんはこの番組をどう見たのでしょうか?

多くの人が持つ「公造欲求」

小学生の頃、芸能人と頻繁に仕事をしている広告代理店勤務の親族がいて、時たま会うたびに、「ねぇ、あのお笑いコンビ、本当は仲良いの? 悪いの?」と前のめりに聞いていた。「ああもう、ものすごく仲悪いよ、目合わさないからね」なんて返事を聞くと、翌日、小学校で、「知ってる? 〇〇って本当はめちゃくちゃ仲悪いんだよ、いっつも喧嘩しているらしいから。テレビで仲良くしているの、実はあれ、全部嘘だから」と大袈裟に吹聴すると、隣のクラスに伝わるほどの情報となり、事情通っぽく扱われることに快感を覚えたのだった。これが私の初めての「井上公造的体験」だが、この手の「公造欲求」は多くの人が持っているのではないか。芸能界の裏事情というのか、実際のところ、あやふやな情報なのに、断言してみた経験を持つ人は少なくないだろう。

芸能人側から発せられる情報の多さ

とりわけ海外のロックバンドのインタビューでは、脱退した誰かへの罵りが繰り返される。「あいつはサイテーな奴だったよ」や「バンドへの愛着なんてちっともなかったんだからな」といった根本的な否定が次々と投じられ、辞めたほうに話を聞けばそれ以上の恨みが返ってきて、泥仕合となる。15年後、ギャラに目が眩んでオリジナルメンバーで再結成する時には、そんな泥仕合がすっかり消えているのもご愛嬌である。実際の関係性、実際の仲に、人はどうしたって興味を持つ。真実がどう、というより、勝手に探りを入れる行為そのものを楽しんでしまうのである。

だが、その手の「公造欲求」は、今では、芸能人側から発信される情報の多さ、主にSNSの浸透によって削がれている。「テレビに映っている自分たち」だけではなく、「実は自分たち、こんな感じなんです」というチャンネルが複数用意されることで、「実はあれ」の部分まで、本人からの提供を受けるようになってしまった。その流れはコロナ禍で加速し、「商品発表会見が終わった直後の芸能レポーターからの下世話な問いかけ」なんてのはすっかり減り、薄い情報を手掛かりにしたイニシャルトークに時間を費やすほどの世の中の安定性も無くなってしまった。芸能人から流れてくる、テレビで見せる一面とは異なる、「アンオフィシャルなオフィシャル情報」というのか、別の側面が、本人から届けられるようになった。結果的にそれが、視聴者が向けてきた「公造欲求」を低減させた。

「けんか別れじゃない」「フラれた側は言わない方がいい」
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

発売即重版! 武田砂鉄さんの最新刊、ぜひお読みください。

この連載について

初回を読む
ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

10ricedar 外野があーだこーだと勝手に推論してるのもどうかと思うが 他人の不倫とか不仲とか家族問題とか 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

morimori_naha 別に関心ないのだが、〈蛍原〉というのが本名だと知ってググったら、超希少姓だった。 2ヶ月前 replyretweetfavorite